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公開日 : 2019/07/03

Q.生きている価値がわからなくなります。悩みを相談することができず一人で抱え込んでしまっています

生きている価値がわからなくなります。なんで生きてるんだろう。もし自分を必要としてくれている人がいるならわたしはその人のために生きたいって思えます。でも多分いません。友達はいます。一緒にいて楽しいと思える友達はいますが、心を許せるまでの友達はいません。だから、こうゆう悩みもすることができず一人で抱え込んでいたので相談してみました。 (高2女子)
自分が必要とされる瞬間に備え、自分を磨こう

この方が回答してくださいました!

立教大学 現代心理学部 教授
つかもとしんいち
塚本 伸一 先生

立教大学文学部心理学科卒業、立教大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程後期課程修了、博士(心理学)、臨床心理士。立教大学助手、上越教育大学助教授、立教大学文学部教授を経て、2006年より現職。その間、立教大学副総長、立教大学現代心理学部長を歴任。専門は発達心理学、教育心理学。著書に『発達と学習の心理学』、『看護学生のための心理学』、『現代心理学への招待』など。



ご相談は、①生きている価値、②悩みを相談できる友人がいない、の2つがあるようですので、それぞれについてお答えします。 



視点を変えてみると今までと違って見えてくる 


① 生きている価値がわからない。 

 

 自分はなぜ生きているのか。生きている価値は何か。とても難しい問題ですね。  


 あなたは、「もし自分を必要としてくれている人がいるなら」「その人のために生きたいって思えます」とおっしゃっています。「他者のために生きる」というのは、生きる価値、生きる意味として、とても大きなものでしょう。そのように考えておられるのに、なぜ「多分いません」と言い切ってしまうのでしょう。「心を許せるまでの友達」がいないからでしょうか。あなたが求めているのは、自分が「心を許せる」かどうかではなく、「自分を必要としてくれる」ことではないですか?「一緒にいて楽しい」友達は、あなたが感じている以上に、あなたを必要とし、とても大切な人だと思っているかもしれません。


 あなたのお家の方はどうでしょう。あなたをきっと、かけがえのない存在と思っているはずです。「人のため」とおっしゃりながら、あなたは自分自身の視点からしか物事をご覧になっていのではないでしょうか。少しだけ視点を変えてみる。いままでと違う見方をしてみる。他者の視点、考え方、感じ方を想像してみる。そのような努力を少しだけすると、いろいろなことが、今までとは違って見えてくるものです。  



自分が「必要とされている」という瞬間は必ずやってきます 


  もう一つ。あなたは、今現在の視点からだけの事を考えていらっしゃいませんか。仮に、今、「必要されている」実感がないとしても、明日はどうでしょう。来年はどうでしょう。長い人生の中で、新たな出会い、新しい体験をし、自分は「必要とされている」という確信を持つ瞬間が、必ずやってきます。


 人は、たった一人では生きていくことはできません。多くの人々に支えられて生きています。「他者のために生きる」というのは、確かにすばらしいことです。しかし、「あなたが必要だ」と言ってくれる人が現れれば、すぐにその人のために生きられるか、と言えば、そう簡単なことでもありません。「その人」を理解し、その人の考え方や感情、行動をみな受け入れる。そうでなければ、その人に寄り添って、「その人のために生きる」ことはできないでしょう。


 そのためには、何が必要か。それはしっかりした「あなた自身」「自分」を持つことです。極めて逆説的ですが、他者を受け止め、支えていくためには、自立し、確立した「自己」の存在がなくてはなりません。唯一無二の自己の存在、何ものにも代えがたい自分の大切さを理解しているからこそ、他者の独自性、特異性を理解し、尊重し、他者の考え方や立場を受け入れることができる。そのことによってはじめて、「他者のために生きる」ということも実現するように思います。


 「生きる価値」を「必要としてくれる人がいれば、その人のために生きたいと思える」というご相談の内容からお答えしてきました。しかし、「生きる価値」「生きる意味」という人間の生の根源に関わる問題は、年齢や時代、様々な経験や状況によっても変化するでしょう。もっと別の価値もあるかもしれません。その意味では、あなたが一生をかけて考えていくものだと思います。



 自ら心を開き、心を許せる関係性を築きましょう  


②心を許せる友人がいない。 


 「生きる価値」はとても深く重い問題ですので、簡単に友達に相談できるような問題ではありませんね。おそらく、このような問題を相談できる友人を持つ高校生は、そう多くはいないと思います。その意味では相談できる友人がないことを心配する必要はないと思いますし、そもそも、自分自身の問題に正面から向き合い、悩むことができることは、高校生の頃(心理学では青年期と言います)の大切な力だと思います。「悩みを一人抱え込むこと」、「相談できないこと」が悪いことだとは全く思いません。


 とはいえ、あなたは「心を許せる友人」「相談できる友人」が欲しいと思っているわけですよね。そうした友人を持つためにはどうしたらよいか。友人は待っていてもあらわれません、まずは、自分から心を開くことです。社会心理学では好意の返報性という原理が知られています。自分を好きになってくれた人を好きになるということです。こちらから積極的にかかわり、相手と真摯に向き合えば、相手も心を開いてくれるはずです。



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