Q.好きなはずのことが楽しめず、そのことを考える度とても辛くなります。
この方が回答してくださいました!
小説家。2002年『リレキショ』にて第39回文藝賞を受賞しデビュー。続く『夏休み』、『ぐるぐるまわるすべり台』は芥川賞候補となる。ベストセラーとなった『100回泣くこと』ほか、『デビクロくんの恋と魔法』、『トリガール!』、『大きな玉ねぎの下で』等、映像化作品多数。アプリゲームがユーザー数全世界2000万人を突破したメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』のストーリー原案・作詞等幅広く手掛けており、若者への影響力も大きい。
「上手く書こう」と意識するうちに、自由に創作を楽しむ気持ちが段々薄れていってしまう経験は僕にもあります。そういう時には、上手くたくさん書くのは難しくても、とにかく少しずつでもいいから書こうとしています。
たとえば、1行だけ書いてみるんです。このとき、「1行しか書けなかった」と思うのではなく「1行書けた」と前向きに捉えるようにしています。本当にちょっとしたことをやってみて、それをしっかり評価してあげることが大切です。小さな1歩もどこかに繋がっていくわけですから。
少しでも自分の出来たことを認めてあげることを意識してみるといいと思います。
ネガティブな思いもエネルギーに!
ポジティブな気持ちとネガティブな気持ち、創作する時にはどちらも必要だと僕は思っています。車にたとえるなら、ポジティブな気持ちがエンジンで、ネガティブな気持ちはハンドルのようなもの。今はネガティブな気持ちが強くなってしまって描けなくなっているのかもしれませんが、どちらの感情とも上手く付き合えるようになると、とても心強いと思います。
たとえば「嫉妬」や「悔しさ」といった嫌な気持ちも、上手くかじを取れば、自分を伸ばすエネルギーになります。だから、ネガティブな気持ちから逃げるのではなく、むしろ創作に利用するくらいのつもりで。ネガティブな気持ちに負けてしまわないようにね。
自由を取り戻す長い旅。初心を覚えていよう
最後になりますが、かつて自由に描いていた頃の記憶は、これからもぜひ覚えていてほしいなと思います。やはり、年齢を重ねたり、キャリアを積んでいったりすると自由に創作することは難しくなってきます。僕自身もそうでした。それでも始めたばかりの頃の楽しさはずっと覚えていて、その良き記憶は今でも創作の原動力になっている気がします。
創作を続けていくうちに、他人からの評価を気にして「上手く描かなきゃ」と思うようになってしまうのは、自然なことです。だからこそ、自由を取り戻す長い旅だと思って、まずはちょっとしたものでもいいので、気楽に描いてみてください。そうすれば、あの頃の楽しさをまた少しずつ取り戻せるのではないでしょうか。