Q.生きている価値がわからず気持ちを楽にしたい
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東海学院大学人間関係学部准教授 長谷川晃(はせがわあきら)早稲田大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得満期退学、博士(人間科学)。東海学院大学人間関係学部助教、講師を経て、2014年より現職。公認心理師、臨床心理士。
誰かに相談してみよう
高校時代には、中学生の時までと比べて活動の範囲が広がりますし、進路の選択肢も増えます。人間関係も複雑になってきたことでしょう。何事も自分の思い通りになっていれば楽しい時間を過ごすことができるのでしょうが、うまくいかず、思い悩んでしまうこともあるでしょう。恐らくご質問下さった方は色々なことがうまくいかず、考え込んでしまっているのではないかと思います。
もし信頼できる人がいるのであれば、その人に悩みを打ち明けてみることをお薦めします。心理学の研究では、自分の悩みを他の人に聞いてもらうだけで気分が改善することが示唆されています。ただ、悩みを打ち明けた際に、相手が無関心であったり、相手から厳しい言葉ばかりを浴びせられると、気分が落ち着くどころか、逆に落ち込んでしまうことでしょう。話を真剣に聞いてくれる相手を選ぶことが重要です。
「反すう」からの抜け出し方
気分が落ち込んだ時に、自分自身のことやうまくいない状況について考え続けることを、心理学では「反すう」と呼びます。反すうしている時には、嫌なことばかりが頭に浮かんできますので、気分がますます落ち込みます。質問の中にある「生きている価値が見いだせず、真剣に悩んでいる」という状態は、反すうに当たると思います。ここで重要になってくることは、生きる意味や価値を考え続けたとして、果たしてその答えが見つかるのか、ということです。もちろん、生きていく中で、その意味や価値を実感できる時もあるでしょう。しかし、生きる意味や価値はそう簡単に見いだせるものではないでしょうし、納得できる絶対的な答えというものはないのかもしれません。そして、考えれば考えるほど気分は沈みます。
そこで、生きる意味や価値を考えることを一時的に保留し、目の前にあることに集中してみるのが良いでしょう。なかなか辿りつかない答えを探し求めても、反すうから抜け出せず、気分が落ち込む一方です。そのため、まずはやるべきことに取り組みます。何かに集中している時には反すうは中断され、気分が悪化しにくくなりますし、充実感を抱ける時もあるでしょう。その過程で、生きる意味や価値を実感できるタイミングが出てくるかもしれません。
困った時には専門家に相談
以上のような方法をお試し頂いて悩みが解決すれば良いのですが、そうはいかないかもしれません。その時には、医療機関や心理相談室などで心理士に相談してみるのが良いのではないかと思います。心理士は人の悩みを聞く専門家ですから、話を聞いてもらうだけで気分が改善するかもしれません。また、認知行動療法という心理療法では、反すうを初めとする否定的な考え方を解消する方法が多数用意されています。認知行動療法を受けることで、ご自身の考え方を見直し、修正することができるのではないかと思います。医療機関や心理相談室を訪ねることはハードルが高いと感じるかもしれませんが、最近はそこまで特別なことではなくなってきています。もし気分がすぐれない日が続くようでしたら、一度それらの機関をご訪問なされることをご検討下さい。