Q.汗を抑えたい
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大阪府出身、大阪大学医学部・大学院医学研究科博士課程修了。医学博士。皮膚科専門医。臨床遺伝専門医。日本皮膚科学会皆見省吾記念賞(2010年)、日本研究皮膚科学会JSID賞(2018年)、慶應義塾大学医学部北里賞(2020年)などを受賞。臨床医として患者さんを診療する(人を診る)だけでなく、常に基礎医学研究者の眼をもって目の前にある病気のメカニズムを考える(病気を診る)、その両立を心がけている。
汗が多い病気を多汗症といいます。多汗症には、全身の汗が増加する全身性多汗症と、体の一部分だけ(手足や腋窩など)で汗が増える局所多汗症があります。
全身の汗が多い全身性多汗症には、特に明らかな原因がない場合と、内分泌疾患や神経疾患に合併して二次的に全身の多汗症状が出る場合があります。局所多汗症も、特に明らかな原因がない場合と、神経障害などの原因がある場合があります。
まずは、正しく診断することが大切です。いずれの場合も、まずは皮膚科専門医を受診しましょう。
全身の汗が多いとき
なかなか良い方法がありません。内服薬として、ただひとつ臭化プロバンテリンに保険適応があります。ただし、口の渇きや眠気といった副作用があります。
発汗の理由が不安にある場合や、発汗に対する恐怖心で情緒不安定になる場合など、抗不安薬を使うことが効果のある場合があります。このような場合は、皮膚科ではなく抗精神薬の使い方に熟練している専門医に相談する方が良いでしょう。
部分的に汗が多いとき
局所多汗症は、たとえば手の平の汗が多くて、解答用紙が汗で凸凹になってしまうような症状です。治療方法としては、塩化アルミニウムの外用や、イオントフォレーシスという方法があります。塩化アルミニウムは長期間使っていると「かぶれ」を起こすことがあるので注意が必要です。イオントフォレーシスというのは、水道水を張ったトレイに手足を浸して、電流を流すという、安全性の高い治療法です。イオントフォレーシスには専用の機器が必要ですので、専門施設の受診が必要です。この2つが、まずは行う標準的な治療法になります。
なお、保険適応になっていない治療方法としては、ボツリヌス毒素の局所注射や、交感神経の切断術があります。 ボツリヌス毒素の局所注射は、痛みの問題や、手の筋力低下が起きる問題があります。また、半年ごとなど、繰り返し施術する必要があることも問題の1つです。メリットとデメリットをしっかりと比べて、考える必要があります。 一方、交感神経の切断術は、術後の合併症で、手の平の汗がおさまる代わりに他の場所(胸や背中やおしり)で多汗が起こるようになってしまいます。日常生活に支障をきたす場合もあるので、あまりおすすめはしていません。切ってしまった神経は二度と元に戻せないので、それ以上どうしようもなくなってしまうからです。