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公開日 : 2021/05/05

Q.大学で何を学びたいかが分からず、勉強の意欲が湧きません

大学で何を学びたいかが分からず、勉強の意欲が湧きません。私は何から始めるべきなのでしょうか。 (高2女子)
本を読んでいろんな分野を知り、気楽に勉強を始めてみよう

この方が回答してくださいました!

東京学芸大学教育学部 准教授
こばやししんぺい
小林晋平 先生

東京学芸大学教育学部准教授。1974年長野県長野市生まれ。京都大学理学部卒。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。博士(人間・環境学)。専門は宇宙物理学、素粒子物理学。 東京大学ビッグバン宇宙国際研究センター研究員、日本学術振興会海外特別研究員(カナダ・ウォータールー大学、ペリメーター理論物理学研究所)、国立群馬工業高等専門学校准教授を経て、現職。著書に『ブラックホールと時空の方程式』(森北出版)がある。 前任校では在職7年のうち,初年度を除き6年連続でベストティーチャーに選ばれ、学生からついたあだ名が「やる気の無料配布」。 YouTubeチャンネル「PHYSIS Entertainment(ピュシス・エンターテイメント)」主催。2020年3月には高校物理全範囲を24時間連続で講義するライブ配信「24時間ではしりぬける物理」を企画し、成功させた。



意欲はやった後にわいてくる


 この質問には問題が二つあると思います。というのも、勉強に対する意欲が上がらないことと、大学で学びたいことがわからないことって、切り離して考えるべき問題なんです。もっと言うと、大学で学びたいことが決まっても意欲がわくとは限らないんです。やっぱり勉強って大変だから、なかなか意欲なんて出ないんです。


  多くの人が勘違いしていますが、意欲というのは、やる前に出るんじゃなくて、やった後に出るんですよ。不思議なもので、何か1個達成すると、じゃあ次またやろうかなっていう欲が出てくるんですよね。問題集1冊終わらせたから、もうちょっと次も頑張ってみようかなとか、そういう感じで出てくるんです。だから、最初は意欲が出るとか出ないとかを無視して気楽に始める、なんとなく始めることが大事です。これが勉強のコツですね。    


 何か成果を求めようとか、すぐにできるようになろうとか思っちゃうと、つらくなっちゃうから、成果を気にせずになんとなく始めてみてください。何の気なしに始めると、やっているうちにやる気が出てくるはずです。 



本屋に行っていろんな世界を見てみよう  


 もう一つの問題は、何を学びたいかがわからないという点です。これはある意味当然で、高校生は持っている情報量が少ないので、大学の学部でどんな勉強をしているかなんて、その段階でわかるわけがないんですよね。大学生に聞いてみればわかりますが、入ってみたら思っていたのと違ったと感じている人はたくさんいます。 


 では、少しでもイメージを持つためにどうしたらいいか。それは本屋さんに行くことです。自分で行ける範囲の一番大きい本屋さんに行って、どんな本があるのかをぶらぶら見てみるんです。都市部に住んでいる人でなければ、まず大きい本屋さんに行くと、こんなに本ってあるのかってびっくりすると思うんです。見て回っているうちに、世の中にはこんなにいろんなことがあるのかってことが高校生くらいになればわかるはずなんです。最初はそういうところを見て、何となく面白そうな本を買って帰って読む、それでいいです。こんなことやっている人がいるんだって知るだけで全然構わないです。 


 本当に自分に向いている勉強とか本当に自分がやりたいことに直結している学部となるとなかなか見つからないと思います。大学入ってからだってこれで良かったのかなって思うのはある意味当然だし、それどころか就職してからだって、これは自分の天職なのかと、どの大人もみんな思っているわけです。無限の選択肢があるから、そんな簡単に決まらないんです。そんなすぐに決まっちゃっても面白くないですしね。だから、どっかでそういうものとして世の中を「引き受け」て、まずは試してみるしかないっていうところがあるんですが、やりたいことが見えてきたときに、道を変えることはいくらでも可能だということを知っておいてください。皆さんが10年後、20年後にやっている職種が、今はまだ世の中に存在していないなんてことだってざらにあると思いますよ。 



大学生はいろんなことを立ち止まって考えることができる貴重な時間  


 大学の4年間って本当に貴重なんです。若いうちの4年間、やっぱり18から22か23ぐらいの4年間と、歳をとってからの4年間って意味が大きく違っていて、こんなに活発に活動できる時間ってないんですよ。高校生は授業や部活や塾なんかで忙しいし、社会人になっちゃうと簡単に仕事は休めない。でも大学生は時間割が自由に組めたり、長期休暇があったりして自由な時間が一番とれるんですよ。なんなら講義なんて数回休んだっていい。休むのは大学生の権利なんです。だから1回や2回の欠席ごときで単位を落とすことなんかないシステムになっているんです。大学生はそうやって、どっかで立ち止まっていろんなことを考える権利が与えられてるんですよ。 


 その権利を思いっきり生かして、自分は何がしたかったんだろうかって考える4年間が大学の時代なんだってことを思ってくれればいいと思います。ちなみに、小中高の時期にもそういう時間がたくさん持てるように学校制度の改革も少しずつ進んでいます。皆さんが悩んでいる内容は人間として非常に自然で、大切なことなので、こうしたことをもっと多くの人が幼い頃から当たり前に議論できる世の中にしたいと思っています。



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