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公開日 : 2022/05/30

Q.コンプレックスの吃音から逃げたいです

私は小学生のときから吃音です。どもるのが怖くて、人前で話す際にすごく上がってしまって何を言っているのかわからないくらいどもってしまう時もあります。そのため、常に「話す」という行為に怯えてしまいます。辛い時は逃げてもよいのでしょうか。これから大人になって、恋愛や大学や就職などをこなして生きていけるのか不安しかないです。 (高2女性)
逃げる前に、じっくり自分と向き合ってみよう

この方が回答してくださいました!

九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科 助教
きくちよしかず
菊池良和 先生

九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科助教、医学博士。中学1年生のときに、「吃音の悩みから救われるためには、医者になるしかない」と思い、猛勉強の末、鹿児島ラ・サール高校卒業後、1999年九州大学医学部に入学。医師となり、研修医を2年間終えた後、2007年に九州大学耳鼻咽喉科に入局。2008年より九州大学大学院に進学し臨床神経生理学教室で、「脳磁図」を用いた吃音者の脳研究を行ない、今まで4度国内外での受賞をしている。現在、九州大学病院耳鼻咽喉・頭頸部外科で吃音外来を担当。吃音の著書多数。年平均20回、全国各地の講演会に招待され、吃音の啓発に努めている。医師の立場で吃音の臨床、教育、研究を精力的に行なっている第一人者である。



悩みのタネを分析しよう


 「話す場」から逃げると、自分の行動範囲を狭めてしまいます。言葉に詰まってもいいから、話すようにしてみるといいですね。


  私の研究によると、吃音のある思春期の人の約半数は社交不安症を併発しているというデータがあります。社交不安症とは、いわゆる対人恐怖症、あがり症のことです。


  今あなたが悩んでいるものが吃音だけの場合、吃音というのは話す時にこういうテクニックを使えばいいよ、というようなアドバイスをすることがあります。しかし、社交不安症を併発している場合、吃音と社交不安症の両方のアドバイスが必要になります。そのため、あなたの悩みをこれは吃音に関する悩み、これは社交不安症に関する悩み、というように分けて考えるとわかりやすいと思います。 



あなたは1人じゃない


 上記のことをふまえて考えてみると、あなたの「クラスで話す時に他のクラスメイトに見られるのが怖い」という悩みは社交不安症に関するものだとわかります。どもりたくなくて言葉が出ずに落ち込んでしまう、という悪循環は辛いですよね。 


 それに、同じ悩みを抱えているのはあなただけではないということです。一説によると、吃音に悩む人は100人に1人いると言われており、アメリカのバイデン大統領やイギリスのエリザベス女王の父であるジョージ6世もその1人だったとか。 


 そういった意味で、1つ作品をご紹介したいと思います。それは「きつおんガール」という漫画です。吃音の主人公が社会福祉士として働く姿を描いているのですが、その本人も幼い頃から学校での発表が怖かったと言っている場面があります。自分と同じだ、と思うと孤独感や怖い気持ちも少し減るんじゃないかなと思います。ぜひ、読んでみてください。


  また、吃音の中高生の集まりというものもあります。あなたの「怖い」という気持ちをわかってくれる人たちと実際に会い、他の人たちがどのように対処しているのかというのを聞いて自分にもできそうなことを取り入れる、というようにするとあなたの行動範囲が広がるし、働くこともできるかなと思います。つまり、もし1人で悩んでいるのならあなたは1人ではないということを自覚し、仲間に吃音であることを伝えて力を借りることで不安なことが減ることもあるということを知ってほしいのです。 



カミングアウトすることも大事


 このような悩みは悩んでいるということを自分から伝えないと誰にも理解してもらえないため、授業で先生に当てられることの恐怖心から学校に行けなくなってしまう人もいます。その場合、先生に吃音で悩んでいるということをカミングアウトすることで授業内の発表を免除してもらうという合理的配慮が受けられるので、高校を卒業するためにはそういった決断も良いと思います。



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