Q.無駄を楽しむとはどういうことですか?
この方が回答してくださいました!
1937(昭和12)年、鎌倉生れ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。1989(平成元)年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。新潮新書『バカの壁』は大ヒットし2003年のベストセラー第1位、また新語・流行語大賞、毎日出版文化賞特別賞を受賞した。『唯脳論』『かけがえのないもの』『手入れという思想』『バカの壁のそのまた向こう』『ヒトの壁』など著書多数。
―無駄を楽しむとはどういうことですか
数学の問題を考えようと思って走り回るのは無駄か無駄じゃないかって判断するのは、結構むずかしいですよね。目的とは違うことをすると、目的から測れば無駄になりますが、そうではない測り方をすると楽しむって言いますから。
役に立つことは辛いことで楽しいことっていうのは辛くないこと、つまり無駄なことだってどこかで思っているのではないでしょうか。そこまで固く考える必要はないと思います。古い言葉で論語に、何かをするときにそれを好むものにはかなわないというものがあります。
「これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む者は、これを楽しむ者に如かず」
例えば絵を描くとすると、絵を描くのが好きな人にはかなわない。しかしこれを楽しむに如かず。つまり絵を描くことが好きな人でも、それを楽しんでいる人にはかなわない。ただ好きなだけじゃ足りないね。楽しむということが何か取り組んでいることを一番上達させる。このようなことを知っていれば、楽しむということは無駄にはならないと言えます。
―養老さん自身は自分では好きだけど他の尺度で見たら無駄だなと思うものはありますか
昆虫の観察をするとかね、標本作るとか、採集に行くとかそういうのが楽しいですよね。でもこれは経済的な尺度から見たら全くの無駄で、むしろマイナスでしかないです。その時間働いたらお金になるのにとかそういうことを考えちゃったらやっていることは意味がなくなっちゃう。だから間違ったモノサシを差し当てると人生面倒なことになってしまいます。