Q.現状から抜け出し人の心に響く文を書くには、どうしたら良いですか?
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小説家。2002年『リレキショ』にて第39回文藝賞を受賞しデビュー。続く『夏休み』、『ぐるぐるまわるすべり台』は芥川賞候補となる。ベストセラーとなった『100回泣くこと』ほか、『デビクロくんの恋と魔法』、『トリガール!』、『大きな玉ねぎの下で』等、映像化作品多数。アプリゲームがユーザー数全世界2000万人を突破したメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』のストーリー原案・作詞等幅広く手掛けており、若者への影響力も大きい。
自分で課題を設けてチャレンジしているのは素晴らしいことですね。ですが、時には気楽に書いてみることも大切かもしれません。実は、小さな制約を作ることで、むしろハードルが下がることがあります。そこで僕が1番おすすめしたいのは、1行目を自分の好きな言葉から始めてみること。例えば、意味のない会話から始めてみたり、「トントントン」のような擬音語を使ってもOKです。
物語の構成やオチをゼロから考えようとすると大変ですが、ある1文の続きを考えてみるだけなら意外と書き始めやすくなるものです。
心へ響かせるカギは「主人公への共感」
読者は、主人公の目線で物語を追い、主人公に共感しながら小説の世界を見ています。そのため、物語が人の心に響くための1番の鍵は「主人公への共感」なのです。では、共感のもとになる「リアリティ」を生み出すにはどうすればいいのでしょうか?方法は2つあります。
1つ目は、主人公のセリフを書いた時に、「本当にこんなこと言うのだろうか?」という視点で1行ずつ丹念に考え直していくこと。2つ目は、小説を読んで欲しい相手を具体的に思い浮かべて書くこと。そうすると、読者の気持ちがリアルに感じられますよね。
僕自身は、「10代後半の頃の自分自身を感動させたい!」という気持ちで小説を書き始めました。もし、自分とは違う立場の登場人物を描写する場合も、背伸びをせずに、今の自分の気持ちを少しスライドしてみるくらいの感覚で書くのがいいと思います。 1行で別世界へー「非日常」への入口を探す。
1行で別世界へー「非日常」への入口を探す
小説の1行目って、重要です。1行で別世界に行く文章、というのを考えてみるのも良いと思います。いつもの日々とはちょっと(あるいは大きく)違う「非日常」を描くことで、読者を日常の感覚から切り離して、物語の世界に一瞬で引き込むことができます。例えば、川端康成作『雪国』の冒頭の1行目、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」。思わず「どういうこと?!」「続きを知りたい!」と感じませんか。一度、「非日常」ってどのような世界だろう?というのをご自分で考えたうえで、文章を書いてみるのはいかがでしょうか。
あなたの言葉で誰かの心が動く瞬間は、必ず来ます。焦らず、あなたらしい表現を探し続けてくださいね。