Q.私はHPVワクチンを受けていません。親は反対派のようです。このワクチンがどれほど重要なのかいまいちわかりません。
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京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子含む四児の母。産婦人科診療の傍ら、子宮頸がん予防や性教育、女性のヘルスケアなど生きていく上で必要な知識や正確な医療情報を、メディア、企業研修、書籍、SNSなどを通して発信している。婦人科受診のハードルを下げるため2024年7月渋谷にInaba Clinic開院。
HPVワクチン(通称:子宮頸がんワクチン)はその名の通り、子宮頸がんの発症を予防することができるワクチンです。子宮頸がんは女性の誰もが罹る可能性がある病気で、患者さんは20代から40代が1番多いんです。
子宮頸がん発症の原因はヒトパピローマウイルス(HPV)にあります。このウイルスに感染することで、将来がんになる可能性を持つ「前がん病変」を引き起こすことがあります。
子宮頸がんはHPVワクチンと定期的な子宮頸がん検診で予防することができます。HPVワクチンは子宮頸がんや「前がん病変」を引き起こすHPVの約9割を感染予防できます。
そのため、HPVワクチンは女性にとって、受けておくと安心だと思います。
HPVワクチン接種が始まったのは実は最近!?
日本でHPVワクチンの接種が始まったのは、2009年からでした。つまり、保護者の方たちが中学生の頃、HPVワクチンはまだありませんでした。
また、2013年に副反応疑いのニュースがあったことも、保護者の方たちがHPVワクチン接種に反対していることに影響しているのかもしれません。その後の調査研究で、副反応と疑われた症状はHPVワクチンを接種していない人たちにも同程度の割合でみられることが分かり、HPVワクチンとの因果関係は示されていません。
「それでも心配」という場合は、一度、保護者の方と一緒に産婦人科へ行き、一緒に先生に相談してみましょう。なお、16歳以上であれば、保護者の署名なしに自分の判断で予防接種を受けることができます。
ワクチンが高ければ、定期検診でも大丈夫
17歳以上になるとHPVワクチンは有料になり、合わせて10万円ほどかかります。そのため、躊躇する人もいるでしょう。その場合は、子宮頸がん検診を定期的に受けることで、もしなにか異常がでても、がんになる前の「前がん病変」の段階で見つけることができます。
ただし、がん検診はあくまで異常がでてからの「早期発見」です。前がん病変になることも防ぐことができるのはHPVワクチンだけです。がん検診を受ければHPVワクチンをうたなくてもよい、というわけではなく、まだ無料で接種できる世代の方は、HPVワクチン接種によりリスクを下げておくことをおすすめします。
また、HPVワクチンを接種した方も、子宮頸がん検診を受けることが重要です。HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるHPVのうち約9割を予防できます。残り約1割のリスクについては、子宮頸がん検診を受けることで、がんになる前に見つける。この両輪で子宮頸がんにならずに済むのです。