Q.勉強中に頭の中で音楽がループして集中できません。この「イヤーワーム」の対処法や脳内のメカニズムを教えてください。
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1975年生まれ。東京工業大学(現・東京科学大学)大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功した人の脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を展開し、これまで4万人以上に才能診断や講演会を提供。テレビやメディアなどにも多数出演。著書は『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える「やりたいこと」の見つけ方』(PHP研究所)など海外も含めて44 万部を突破。TBS Podcast『脳科学, 脳LIFE』のパーソナリティとして、脳科学の最新知見をわかりやすく発信している。
音楽が頭の中で繰り返し流れる現象(イヤーワーム)は、実は90%以上の人が体験する正常な反応です。原因は、脳が持つ「中断された空白を勝手に埋めよう」とする性質。実際、米国の実験では、馴染みのある曲を途中で止めた後も、音を認知する脳の聴覚野が反応し続けることが確認されました。つまり、実際には音が鳴っていないのに、脳が勝手に続きを再生してしまっているのです。
また、脳には寝る前30分間の記憶を定着させる働きがあります。例えば、CMソングのようなテンポが速く短いメロディは、そうした記憶として定着しやすく、空白を埋める格好の材料なのです。このような曲を寝る直前に聴いてしまうと、脳に強く刻まれてしまうため、試験前夜は控えておきましょう。
ガムや逆さ読みで脳をダマして、音楽を上書き!
まず、勉強中や休憩時間におすすめの対処法は、ガムを噛むことです。ガムを噛む口の動きと歌を口ずさむ動きが似ているため、噛むことで脳をごまかすことができると言われています。事実、英レディング大学の研究によると、ガムを噛んだグループはそうでないグループに比べ、イヤーワームの発生が約30%も減少しました。
一方で試験中など、ガムを噛めない場合に即効性があるのが「逆さ読み」です。試しに、「コアラ」を逆さに読んでみてください。これは簡単ですよね。では、レベルを上げて「コアラうどん」はどうでしょう?正解は...「んどうラアコ」。パッとは出てこないですよね。こうやって言葉遊びに集中すると、脳の認知機能に負荷がかかります。その結果、音楽を再生するために使っていた脳の容量を奪うことができ、自然と音が止まるというわけです。
勉強前に「ゾーン体操®︎」!目線のクセをなくして集中モードへ
実は、イヤーワームの原因は音楽だけではありません。「目線」も深く関係しています。そこで、目線のパターンをリセットするのに効果的なのが、椅子に座ったまま実践できる「ゾーン体操®︎」です。これにより、脳が集中状態(ゾーン)に入り、自然と音楽が消えていくでしょう。
①片腕を前にまっすぐ伸ばし、親指を立てます(「いいね!」のポーズ)。
②親指を「目だけ」で追いながら、顔は動かさずに腕をゆっくりと大きく回します(右回り・左回り2~3周ずつ)。
③親指を見つめたまま顔に近づけて、最後に遠ざけます。
授業前にこの体操を実施した研究において、生徒の集中力が向上したというデータもあります。周りの目が気になる場合は、試験直前のお手洗いなどで行うのがおすすめです。
*ゾーン体操®︎の詳細については、西先生の下記の書籍にイラスト付きでわかりやすく解説しています。
・『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』(ダイヤモンド社)
性格も関係あり?止めようとしないのが1番の近道
また、感受性が豊かな性格の人ほど、脳の扁桃体が繊細で、音に敏感になりがちです。音が耳に残るのと同じように、失敗した記憶や嫌な言葉まで頭の中で繰り返されてしまうことはありませんか?これは、脳がそれらを排除すべき危険と見なし、「2度と傷つきたくない」という防衛本能(恐怖学習)が働いている証拠なのです。
しかし、「この箱は絶対に開けないで」と言われるとつい開けたくなるのと同様に、無理にそれらを消そうとするのは逆効果。脳には「禁止されるほど余計にやりたくなる」という性質があるため、かえって音楽を繰り返し再生しようとしてしまいます。
つまり、「音楽が鳴ってもガムやゾーン体操でリセットできるから大丈夫」と楽観的に捉えておくことが重要です。「いつでも消せる」と知っているだけで、脳の暴走は自然と収まっていくでしょう。