Q.数学を勉強する意味が分かりません。
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1968年山形県東根市生まれ。サイエンスナビゲーターⓇ sakurAi Science Factory 代表取締役CEO 東京工業大学理学数学科卒、同大学大学院院社会理工学研究科博士課程中退。 東京理科大学大学院非常勤講師。2000年にサイエンスナビゲーターⓇを名乗り、数学の歴史や数学者の人間ドラマを通して数学の驚きと感動を伝える講演活動をスタート。東京工業大学世界文明センターフェローを経て、現在に至る。小学生からお年寄りまで、誰でも楽しめて体験できる数学エンターテイメントは日本全国で反響を呼び、テレビ・新聞・雑誌など多くのメディアに出演。著書は『感動する!数学』『雪月花の数学』『わくわく数の世界の大冒険』『面白くて眠れなくなる数学』など50冊以上。※サイエンスナビゲーターは株式会社sakurAi Science Factoryの登録商標です。
いい質問です。もしあなたの質問が数学を勉強する「目的」であるとすれば、多くの高校生にとって「学校の試験のため」「受験のため」が答えとなるでしょう。
しかし、あなたは目的ではなく意味を問うています。人は意味を考える動物です。目的は多くの人で共通となることが多いですが、意味は十人十色、一人一人違います。似た言葉に意義があります。例えば、「食べること」の目的は生きるためです。同時に私たちは食べることの意味・意義も考えます。楽しみや生きがい目的は万人共通であっても、食べることの意味は十人十色でしょう。
数学もこれと似ています。数学の目的は、「試験」「受験」かもしれませんが、学ぶことの意味として大きなものに数学をツール(道具)として活用することがあります。社会科学・自然科学・工学分野で数学をツールとして用いない領域はありません。それほどにツールとしての数学の威力は絶大です。 もちろん、数学を用いない学問領域もたくさんあります。そのような世界に関心がある人にとっては、ツールとしての数学と言われてもピンと来ないでしょう。しかし、実は私たちが生活していく中で考えている「思考」の多くが数学に翻訳できます。時間や金額などの数量化。イメージを描くことは、幾何学。筋道立てて考えることは論理。未来のことを予測したり予想したりすることは、スケジューリングやシミュレーション。無駄を最小にして利益を最大にしようとする最適化に役立つのは、関数の最大最小を求めること。状況・現状を他人にわかりやすく可視化・表現するのが数学の統計やグラフ。
このように数学で学ぶ考え方自体が生活していく上でとても役立ちます。数学の公式がそのまま役立つ職業は限られていますが、数学的思考は万人に役立つということです。
世界を動かす数学
最後にもう一つ、数学を学ぶ意味を。数学は数千年をかけて世界中でつくり続け、伝えられてきている人類の叡智の結晶です。私たちが地球で生きるためには、水・空気・食料が必要ですが、それ以外にも必要なものがあります。「いつ」と「どこで」です。自分が立つ場所はどこで、今はいつなのか、これを知らずに安心・安全に生きることはできません。それらを知るためには、暦と地図が必要になります。暦と地図をつくるために数学は数千年前につくられました。
現代においても、同じ状況は続いています。世界一のIT企業グーグルが力を入れているのが地図です。そして、地図はもちろん、グーグルの扱うすべてのシステム・サービスは数学を駆使してつくられています。グーグルの正体は、世界一の数学企業なのです。数学ほど役に立つものはないということです。