この方が回答してくださいました！

　大学から先で学ぶ物理とか、最先端で研究されている物理とかは、多分、高校生が想像するのとかなり違っているんじゃないかと思います。例えば僕が物理をやってよかったなと思うことは、前提を覆すことができるとか、僕らが知らず知らずの間にはめられている枠を自由に外せるようになったことです。 

　例をあげれば、「私たちが住んでいる世界は何次元ですか？」と聞かれたら多くの人は三次元と答えると思います。「じゃあ、その証拠は？」と聞かれるときっと答えられないですよね。目に見える世界だと三次元しかしか見えないから、そう思ってしまう。 

　でも、物理ってそういう僕らが思っていた前提一度を外してみて、本当にそうなのかどうかを考えるんですよ。この世界がもし三次元空間じゃなかったらどんな現象が起きるのか？と考えてみるわけです。 それを実際に実験で検証していくということを、世界の最先端の物理ではやっています。今まで当たり前だと思っていたことが全然当たり前じゃないとか、僕らが無意識にはめていた枠を外してもいいんだっていうことを物理は教えてくれるんですよ。  

受験で使う物理は物理世界の入り口

　受験で使う物理って、公式を組み合わせて、与えられた問題をどうやって解くかがほとんどだと思います。物理に限った話じゃないですが、そもそも学校で学ぶことって、誰にとっても必要となる「幹」の部分だけ。スマホで例えるなら、スマホの電源の入れ方を学んで、せいぜいネットの見方とメールやSNSの使い方を教わった程度なんですよ。好きなアプリを入れてカスタマイズするのはその先です。どの教科もはるか先まで学ばないと「使う」のは不可能なんです。小学校で「一定の速度で歩いたら3時間後に何キロ先に着くか」みたいな問題がよく出ますけど、あれを現実の話だと思っている人はいませんよね。速度は時々刻々変化するんですから。それと同じで、受験でやっていることは非常に単純化された「練習問題」なんですね。あらゆる学問を現実に適用できるようにカスタマイズするのは受験が終わってからなんです。 

　僕としては、そういった受験の先の物理を学んでくると考え方が変わってくると思うので、そういうのを味わってほしいなっていうのがありますね。ただ、高校生が自分たちだけで、本当の物理の世界にどっぷり浸かることって難しいから、僕のおすすめは良質な動画を見たり、入門書を読んだりすることです。

　 物理って難しいと思っている人はたくさんいると思います。でも、その本質は単純なんですよ。例えば、自然界って基本的にエネルギーが小さくなるように進みたがるんです。この法則が、物体がどういう軌道を通って進むかとか、宇宙がどうやって膨らむかとか、ブラックホールがどんな形になるかというところに全部共通しているんです。そういうことがわかってくると自然界全部を同じ目で見ることができ、物理が楽しくなってきます。

　 今やっている勉強は、実はそういう最先端の話にも本当は繋がっていくということが見えてくると、物理の面白さがわかると思います。高校までの勉強って物理のほんの一部分なので。ぜひ受験や試験勉強だけで終わらない、その先の話まで見てほしいです。