Q.一人部屋があるのですが、怖いことを考えてしまって一人で眠れず、父と寝ています。どうすれば一人で寝れるようになるでしょうか。
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<略歴> 1986 岐阜大学医学部卒業 2008 岐阜メイツ睡眠クリニック 院長 2018 医療法人三遠メディメイツ睡眠医療部統括部長(併任) (豊橋、岐阜、岡崎、磐田) <現在> 公認心理師 国立精神神経医療研究センター 客員研究員 愛知医科大学睡眠科 客員研究員 日本睡眠学会:専門医, 評議員 教育委員(CBTセミナー作業部会) 認定委員(検査技師、心理士) <著書> ・睡眠時無呼吸症(朝倉書店)2013;分担執筆 ・内科医が診る不眠症(日本医事新報社)2014:分担執筆 ・外来精神科シリーズ、睡眠障害(中山書店)2015;分担執筆 ・睡眠学(朝倉書店)2020;分担執筆 ・不眠症に対する認知行動療法マニュアル(金剛出版)2020;分担執筆
梅干し理論
誰でも初めて梅干しを口にすると、唾が出ます(無条件反射/反応)。その後、梅干しを見る/イメージする、その後に梅干しを口に入れるを繰り返すと、「梅干し」という言葉を聞いただけでも唾が出ます(条件反射/反応)。
この理論を当てはめます。ストレス発生/感じる→興奮/恐怖が起きます(過覚醒)。普通は入眠行動(布団に入る、消灯するなど)→眠気で入眠となります。ところが、入眠行動のときストレスを抱えていると、眠気よりも恐怖(不安、興奮、考え、イメージ)と結びつきます。やがて、ストレスを感じなくなっても、入眠行動→興奮/恐怖となります。
そして、興奮/恐怖を感じる→お父さんの部屋に入る→恐怖の減少を感じる/安心感がでることで睡眠となります。これが繰り返されると恐怖は感じなくても、お父さんの部屋に入ることが習慣化されます(羹に懲りて、膾を吹く)。
イヤな気持ちは、回転ずし(気づき→受け止め→スルー)
イヤな気持ち(怖い考え)を避けようとすればするほど、イヤさ(怖さ)が増幅される感じになります。そこで、何が気持ちの中にあるのか、整理して特定します。悩みの内容の解消はうまくいかないことが多いし、また別の悩みを生み出します。むしろ、頭に湧いてくるイメージの色や感触などを具体的/マンガチックに書き出すのです(気づき)。気持ちの中のモヤモヤが軽減されることがあります(幽霊の正体を見たり、枯れ尾花)。その後、しばらく今、自分の目の前のことや、身体の様子などに注意を払うようにしてみましょう(注意訓練)。
それでもイヤな気持ちは、無理やり頭から消そうとしても、また考えないようにしても、湧いてきます。まるで、回転ずしの皿が、次々と回ってくるようですね。自分の食べたくない皿(イヤな気持ち)は、あえて「また来てね」とつぶやき(受け止め)、スルーすることは普段やっていることですよね。気持ちは、川の流れの落ち葉、ツイッターのタイムライン、インスタのストーリーズ、と同じで、やがて、目の前から/自分の頭から、消えていくものです。
気長に注文した皿(眠気)を待ちましょう
次に、夜起きていて、アクビが出るくらい眠気が十分出てきたら、消灯して布団に入るようにしてください。すんなり寝付けない場合は、点灯して、布団から出て、(お父さんの部屋に行くのではなく)眠気がやってくるまで待ちましょう。これを繰り返します(虎穴に入らずんば、虎子を得ず)。また、夜の眠気のため、昼間横になるのは避けます。こうして、入眠行動→恐怖ではなく入眠行動→眠気を再学習していきます。回転ずしでは、お腹が空いていても、次々とやってくる皿(嫌なものもあるかも)を取るのではなく、自分の好きなものが乗っている皿(眠気)を待って食べるのが、幸せ感アップしますよね。