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公開日 : 2022/01/04

Q.日本史や世界史などの昔起こった出来事を学ぶ価値を教えてください。

日本史や世界史などの昔起こった出来事について学ぶ価値を教えてください。 (高2男子)
歴史は現在の世界や日本を理解するための材料としての価値がある

この方が回答してくださいました!

大阪市立大学大学院文学研究科教授
きたむらまさふみ
北村昌史 先生

1962年山形県生まれ。1992年京都大学大学院文学研究科退学。1995年博士(文学)(京都大学) 京都大学助手、新潟大学准教授、大阪市立大学准教授を経て、2011年より現職。近現代ドイツ都市社会史を、とくにベルリンを中心として研究している。著書として、『ドイツ住宅改革運動――19世紀の都市化と市民社会』京都大学学術出版会、2007年、南直人、谷口健治、北村昌史、進藤修一編『はじめて学ぶドイツの歴史と文化』ミネルヴァ書房、2020年などがある。



昔起こった出来事は現代を理解するための土台となる


 昔起こった出来事を学ぶことにどのような価値があるのかという疑問は、歴史の勉強をしている高校生が常に思っていることだと思います。確かに、日本史や世界史を学べば短期的には大学受験などで役に立ちますが、すぐに、そして生活をする上で役に立つわけではありません。例えば古代の律令を勉強しても、現在は律令制で物事が動いているわけではないので、現在と直接的な関係はない、役に立たないということは言えると思います。


 ただ、これはどこの社会でもそうなのですが、昔から現在までに色々なことが積み重なってきているんですね。私の専門である西洋史で考えてみると、古代ギリシャが例に挙げられます。古代ギリシャは色々な影響を現在に与えており、民主制的な発想を辿ると、基本的には古代ギリシャの制度に行き着きます。実際は奴隷を働かせていて、必ずしも平等な社会ではありませんでしたが、「みんなで議論しながら物事をやっていく」という現代の社会のルールが作られたのはやはり昔なのです。ヨーロッパなどで古代ギリシャの制度が理想化され、中世や近代を経て形を変えていき、現在の政治制度になっているわけです。ですから、現代を理解するための土台や背景知識として、歴史を勉強するのだと考えると、昔起こったことを学ぶ価値を実感できると思います。 



世界で起こった出来事も現代の日本につながっている


 先ほどはヨーロッパの例を挙げましたが、ヨーロッパのことだから日本には関係ないというわけではなく、やっぱりどこかでつながっており、現代の我々の生きている社会に関わっていきます。例えば、古代ギリシャの文化遺産になっているパルテノン神殿は、丸い柱をたくさん使って建物が作られています。この建築様式はその後のヨーロッパの人々も好んでいて、真似して建物を作っていきました。特に19世紀の後半ぐらいになると、ギリシャやローマの建築様式を真似したようなヨーロッパの建築が出来上がります。この建築を古典主義建築と呼びます。


 こういった建築が大流行した時期に日本が開国したので、日本でもそれを真似して丸い柱をたくさん並べたような建築様式がみられるのです。例えば、東京に関しては1936年に建てられた国会議事堂が1番有名です。他にも、日本銀行本店本館や三井本館があります。また、大阪では大阪府立中之島図書館や大阪株式取引所市場館、三井銀行大阪支店、奈良では奈良国立博物館、京都では旧村井銀行七條支店、名古屋では三井銀行名古屋支店があります。欧米では、博物館や大学、図書館などとともに、銀行の建物に古典主義が採用されたので、日本でも丸い柱を並べたような古典主義建築は金融関係の建物によくみられます。


 なので、歴史の授業で学んだことはすぐに役に立つわけではないのですが、本当に世の中を理解していくために必要な知識の一つが歴史であると理解していただければと思います。



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