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公開日 : 2018/12/25

Q.部活を引退後、切り替えが上手くできません。

部活で思うような結果が残せず引退してしまい、悔しくてなかなか勉強に切り替えられません。チームメイトと過ごす時間も激減し、とても寂しいです。これは時間が解決してくれるでしょうか? (高3男子)
過去ではなく未来に目を向け、今を生きよう

この方が回答してくださいました!

大阪大学大学院 経済学研究科教授
おおたけ ふみお
大竹 文雄 先生

京都大学経済学部卒業、大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了、博士(経済学)。大阪大学助手、大阪府立大学講師、大阪大学社会経済研究所教授等を経て、2018年から現職。専門は労働経済学・行動経済学。著書に『経済学的思考のセンス』『競争と公平感』『競争社会の歩き方』『経済学は役に立ちますか?』など。



一旦立ち止まって考えてみて 


 3年間の部活での努力が思うように実らなかったのは、さぞ悔しいことだと思います。今までの努力が無駄になってしまうのが残念で、それが気になって勉強ができないということもあるのではないでしょうか。


    努力の成果を得るために、もっと続けたいという気持ちは誰にでもあります。元を取りたいという気持ちですね。これまでこれだけやったのだから、今やめてしまうのはもったいない。悔しい気持ちはよく分かりますが、冷静に考えてみましょう。


 サンクコストを理解し、行動を変えていこう


    仮に部活を引退せずにいたところで、努力したことの元は取れるのでしょうか。成功するには、努力しないとだめですが、努力したからといって、必ず成功するわけではありません。そういう意味では、過去のことを振り返ってもしかたがないのです。一度支払ってしまった費用や使ってしまった時間で、もう取り戻せないもののことを経済学では埋没費用(サンクコスト)と呼びます。


  例えば、映画館に入るために支払った費用は、一度映画館に入ってしまえば、払い戻してもらえません。映画のチケット代は映画館に入った段階でサンクコストになります。そうすると、その後、映画を見ても見なくても、チケット代が帰ってこないことは同じなので、もう元を取るということを考えても仕方がないのです。ということは、その映画を観出して面白そうだったら最後までみればいいし、つまらなさそうだったら元を取ろうと思わずに映画を見るのをやめるべきです。


    でも、それはなかなかできないものです。しかし、サンクコストという言葉を思い出すと、元を取ろうとすることが無駄だ、と気がついて行動を変えることができるのではないでしょうか。



サンクコストも役に立てよう


  慶應義塾大学の創始者で一万円札に肖像が使われている福澤諭吉をご存知でしょう。彼は大阪の適塾でオランダ語を数年間死に物狂いで勉強しました。ところが、横浜港が開港して横浜に行ってみて、衝撃を受けます。オランダ語が全く通じないのです。英語が話されていたからです。当時の蘭学者は、これからは英語が必要だと分かっていましたが、必死で勉強した蘭学が全く役に立たないから、英語を勉強するのは、努力を捨てさることになり、努力が無駄になるので、辛い思いをしたそうです。


    しかし、福澤諭吉は英語を勉強し始めました。そこで、わかったことは、オランダ語と英語の文法は似ていて、意外に楽に英語を勉強できたということです。つまり、オランダ語の勉強は、完全にはサンクコストではなく、英語の勉強に役立ったそうです。


  同じことは、受験勉強にも言えるでしょう。部活で培われた体力や忍耐力は、受験勉強を進める上で、十分に役に立つはずです。 未来に目を向けて、行動しよう    つまり、二つのことが大事です。


    第一に、過去のことはもう変えられないのだから、過去にこうすればよかったということは考えず、これから変えられる将来のことだけに集中することです。つまり、前を向いて、サンクコストは忘れることです。若いのですから、過去よりも将来の方がずっと長いのです。


    第二に、新しいことをすると、今までやってきたことが無駄になると思いがちですが、意外に今までの努力が新しいことにも役に立つものです。ぐずぐず考えずに、前を向いてとにかくやってみることが何よりも大事です。



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