Q.後輩を上手に叱れない
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神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士後期課程修了。立命館大学教育開発推進機構講師等を経て2015年に鳥取大学着任。博士(学術)/公認心理師。これまで、適応指導教室指導員、特別支援教育巡回相談員を務め、現在はスクールカウンセラーも務めている。専門は学校臨床心理学。主に学校における児童生徒の適応および学校等での心理教育について研究を行っている。
叱ることの目的は、行動や言動を変えてもらうこと
まずいえることは、部活動の中で部員を指導する責任は顧問の先生にあるということです。このため、たとえ先輩といえども後輩を指導したり叱ったりする責任はありません。しかし、あなたが後輩にも成長してほしい、楽しい部活を一緒に楽しみたいという思いをもって後輩を叱ろうと思っているのであれば、やはりしっかりと受け止めてほしいですよね。
では、どのような叱り方をしたいと思っているのでしょうか。後輩に恐れられたい?怖がられたい?学校の先生の中にも誤解している人が少なくありませんが、効果的な叱り方というのは、恐れさせることでも怖がらせることでもありません。叱る目的はなんでしょう?行動や言動(やることや言うこと)を変えてもらうためですよね。もしそうではなく、単に言うことをきかせることが目的なのであれば、そもそもその目的が間違っています。
変えてほしいことを冷静に伝え、相手にも考えてもらえるようにしよう
行動や言動を変えてもらうためにはどうしたらいいのでしょう?何がダメでどうすればよいかを頭で考えてもらわないといけませんね。人を含む動物は、恐怖を感じているとき、戦うか逃げるかということしか考えることができません。つまり何がダメでどうすればよいかを頭で考えてもらうためには、むしろ恐れさせたり、怖がらせたりしてはいけないということです。冷静に何がダメでどうしたらよいのかを伝え、頭で考えてもらうことが必要です。
もし、冷静に行動や言動を変える必要があることを説明しても、後輩が聞かないのであれば、それはあなたの問題ではなく後輩の問題です。顧問の先生や別の同級生などに任せましょう。人間には相性もありますので、相性の悪い相手のためにあなたの大事な時間を使う必要はありません。
笑顔は叱ることよりもはるかに効果的で、すばらしいこと
また、あなたは「表情もいつも笑っているように見える」とのことですが、それはとてもよい力ですね。
人はポジティブな気持ち(楽しい、うれしいなど)を感じているときには発想も豊かになることが分かっています。どのような部活動であっても、良い成績をおさめるためには豊かな発想が必要です。運動部で豊かな発想があれば、より勝利に近づく作戦が思いつきます。音楽系の部活動で豊かな発想があれば、よりみんなを楽しませるアレンジが思いつきます。芸術系の部活動で豊かな発想があれば、すばらしい作品を作ることができます。
気持ちは伝染します。いつも笑っているようにみえるあなたがいるだけで、きっとあなたの部活動にはポジティブな気持ちが拡がっているでしょう。そのことによってみんなが豊かな発想をもつことができているのであれば、叱るよりもはるかに効果的な指導であり、すばらしい先輩だと思います。