Q.友達がうっとうしいです。
この方が回答してくださいました!
法政大学文学部心理学科教授。法政大学大学院ライフスタイル教育研究所所長。教育学博士。専門分野は発達心理学、発達臨床心理学、学校心理学。主な著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗りこえるための発達心理学』(光文社)、『10代を育てるソーシャルスキル教育』(北樹出版)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)など多数。
親しくなりすぎると、鬱陶しく感じるのは当たり前のこと
あなたの気持ちとしては、友達が自分を知ってわざわざ来てくれているのでやさしくしてあげたいという一方で、束縛されているようでなんだか鬱陶しいという気持ちですね。こういった気持ちは分かります。アニメのことを一生懸命話してくる友達も、あなたのことが好きだからいろいろ話しにくるわけですよね。だから、それを鬱陶しいと言いたいけれど言えないといった悩みなのでしょう。
「ヤマアラシのジレンマ」という言葉があります。ヤマアラシ同士がお互い親しくなろうと思って近づけば近づくほど、相手のトゲに刺さって近づけないということです。つまり、「親しくなりたい」という気持ちと「もうほっといて。自由にさせて。」という気持ちがいつも葛藤するわけです。誰も話しかけてくれなかったり、興味を持ってもらえなかったりすると、それはそれで寂しいけれど、興味を持ってきてくれたからといって、いつも話しに来られると思うと、もうほっといて、自由にさせてほしいという気持ちになる。ある意味、みんなちょっとわがままなところがあるわけですが、そこのバランスを取るのが思春期では難しいですね。しかし、大人でもそのように感じてしまうことがよくあります。なので、人間は自分のプライベートな部分にまで相手に入り込まれると、その相手を鬱陶しいと思ってしまうものなんだなとまずは思うことが大事ですね。
相手も傷つかず、自分もストレスをためない方法を試してみよう
「絶交したいです。」とは書いておらず、「その友達と程よい距離感を保てるでしょうか。」とあるので、その友達に嫌いとは言えないですよね。そのような場合にどうすればいいかということですが、ソーシャルスキル・トレーニングをしてみましょう。ソーシャルスキルとは、「対人関係を円滑に築き維持するスベやコツ」(『中学生・高校生のためのソーシャルスキル・トレーニング』より)のことです。その中の、上手に断るスキルを学びましょう。このスキルは、相手を傷つけない、でも自分も我慢しすぎないのがポイントです。
まずは、相手の気持ちを汲み取って、相手に共感をします。例えば「いつもアニメのことを話してくれてありがとう。」と言ってあげましょう。次に、意思表示をして理由を説明します。「申し訳ないけど休み時間は1人でこれをやりたくて、その話を聞いちゃうと自分のことができなくなっちゃうから、休み時間はちょっと一人にしてくれる?ごめんね。」といったような感じです。表現だけでなく、思いをうまく説明できるといいですね。「私は一人の時間を大事にしたいと思っているの」と言った自分なりの理由を伝えましょう。「ごめんね、あなたのせいではないよ」などの謝罪の気持ちを表す言葉も添えましょう。その上で、「放課後にその話をしようよ。」「こういうときだったら、ゆっくりアニメの話ができるよ。」といった代替案を立ててあげると良いですね。このように、「共感」「意思表示」「謝罪」「理由の説明」「代替案の提示」という要素が入っていれば、相手を尊重して丁寧に伝えているので傷つけずに断ることができます。
友達と程よい距離感を保つために、友達も傷つかず、自分もストレスをためない方向で行動してみましょう。うまくいかない時は、別の伝え方をしたりと、こうした葛藤を経験して、だんだん程よい距離の取り方ができるようになりますよ。