Q.親しい友達ができません。
この方が回答してくださいました!
広島大学大学院教育学研究科博士課程後期修了,博士(心理学)。専門は,社会心理学,パーソナリティ心理学,教育心理学。著書に‘Teach psychology with a sense of humor: Why (and how to) be a funnier and more effective psychology teacher and laugh all the way to your classroom’(Curious Academic Publishing,2021年,共著)など。論文に‘The light and dark side of self-directed humor: The development and initial validation of the Dual Self-Directed Humor Scale (DSDHS)’(Personality and Individual Differences, 157, 2020年,共著)など。人間関係におけるユーモアや笑いの機能を幅広く研究している。
ー確かにそうですね。私も今思い浮かべた友人は自分のことを普段から話してくれる人でした。
自分のことをありのままに他者に話す行為のことを「自己開示」といい、誰からも好かれている人は、この自己開示をしていることが多いことが分かっています。なぜ自己開示をすると人から好かれるようになるかというと、自己開示には返報性があるからです。
例えば、友人に失恋の話をされると、自分も何か話さなきゃ、という気持ちがでてきて、ついつい話してしまったという経験はありませんか?これが返報性で、この返報性の積み重ねが人と人とが仲良くなる過程だと私は思っています。自分のダメな部分も含めて開示をしたら、相手がそれを受け入れてくれて、相手も自分のダメなところを話してくれる。この返報性が生まれれば、おのずと親友という存在ができると思います。
ーなるほど、自己開示をすることが大切なんですね。具体的にはどんなことを開示するといいのでしょうか。
自己開示をするときには注意点もあります。例えば、関係の初期です。まだそこまで仲良くない状態で、自分の深刻な病気のことや複雑な家庭環境のことなどを開示してしまうと相手は拒絶してしまう、ということが分かっています。他にも、内容がネガティブなこと、例えば誰かの愚痴や悪口を繰り返しても拒絶されてしまいます。
関係の初期では当たり障りのない浅いところから情報交換を始め、それを徐々に深くしていく。また、相手と共通する話題であると相手も返しやすいので、「この先生の授業楽しいよね」とか「文化祭ではこんな役をやろうと思っているんだよね」など、相手と共通する事柄で、自分の考えていることや感じていることを話すのが一番いい方法だと思います。
ーちなみに、もうすでに仲の良い別のグループに所属している人と仲良くなることは可能なのでしょうか。
あるグループに所属すると、当然、うまくいかないことやストレスになってしまうこともあると思います。グループのなかで、関係性が悪くならないように表面上は取り繕っているんだけど、あまり居心地がよくない、と思っている人はいるのではないでしょうか。グループをよく観察してみると、そのような子も見つかると思うので、自己開示を利用すれば仲良くなれる可能性は大いにあると思いますよ。
ー一見仲が良さそうでも、人それぞれ抱えていることがあるんですね。私も観察してみようと思います。
年を重ね、社会人になると、仕事上の利害関係が絡んでくることもあり、その人が本当の意味で自分と仲良くなりたいのか、自分の持っている資源を欲しているだけなのか、考えたくなくても頭をよぎってしまうものなんです。そうすると、子どもの頃のような純粋な気持ちで友達を作るとこがだんだんと難しくなります。ですので、今を大切にして、いろいろな人と積極的に交わり、分かり合える友達をたくさん作ってほしいなと思います。
ー新しい環境に置かれたときに、どう友達を作っていくかは誰しも悩むことだと思います。 自己開示をうまく使っていけるように私もしたいです。貴重なお話をありがとうございました。