Q.優秀な妹と比較されて辛い
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駒澤大学文学部教授。専攻は文化社会学、教育社会学、社会階層論。共著に『変容する社会と教育のゆくえ』(岩波書店)、『文化の権力』(藤原書店)、『社会階層のポストモダン』(東京大学出版会)など。
親がきょうだい間で比較して、優劣で評価されたりするのは、褒められているほうはあまりに気にならないかもしれませんが、比較されてマイナス評価をもらう場合は、つらいですよね。でも、それを乗り越えるためにすべきことは、あなたご自身が「親離れ」をすることです。あなたがあなたの親よりも「大人」の視点を持てるようになって、「他人と比較する・比較される」という人類普遍の問題をすこし大きな視点でとらえられるようにならないかという提案をしたいと思います。
まず、あなた自身は、親から妹さんと対等に愛されたり、評価されたりしたいと親に期待して求め、腹を立てているわけですが、期待が大きければ大きいほど、それが実現しないと苦しいわけです。その時点で、あなたは「子ども」として親に依存した状態にあるわけです。親の態度で左右されてしまう「あなた」がいる。親のほうも、あなたに期待しているからこそ、比較してしまい、期待通りにならないあなたに苦言を呈するのでしょう。
それならばあなたが一段上の視点から物事を考え、親や他の人に、本当の自分をみてほしいなどと期待しないというところまで、ご自身を進歩させてはいかがでしょうか。子どもとしてではなく、親よりも一層、成長した精神を持つという方向です。そうなれれば、周りに何をいわれようが、自分は自分、自分はとても価値のある人間だとわかるはずです。
親も人間なので、不完全なのです。子どもよりも年齢は重ねていても、人間的に成長のできていない問題のある親もいるのです。あなたが比較されていやだという苦しみに、気が付いてくれる親もいれば、もっとひどいことになる場合も想定できます。
成長した精神を持つための考え方とは
まず、親は、自分とは異なる他者の一人であると考えて下さい。そしてまず自分の価値は自分で決めると決意することです。そもそもあらゆる人間は生きているだけでとても価値のある存在なのだと気が付いて下さい。他者と比較するのではなく、たとえ誰かに何かを言われようとも、それで「真の」あなたの価値は減りもしません。自分に軸足を置き、なにがあっても自分で考え判断するということ、自分の良さは親にもわからないかもしれないし、自分で一番わかるのだということです。それができるようになれば、他者の評価に不安になったり、他者に期待したりすることはなくなり、文句をいう親に対しても「(比較ばかりする)未熟な人なんだ」といらだつこともなく、客観的にみることができるでしょう。
他者と自己の関係について、ラカンという学者がシェーマLという概念で説明したことを敷衍しますと、自分は他者(例えば親)の中に写し出された自己イメージを取り入れて自分がどういう人間かを判断しています。でもそれは「真の主体=真の自分」ではありません。またあなた自身も、自分が想像した他者(例えば、比較ばかりする親)しかみておらず、「真の他者」の顔はみえていない。それはちょうど鏡に映しだされた自己(想像的自我)と他者(想像的他者)とのコミュニケーションに過ぎないというのです。これはごく単純化した解釈ですが、こう考えると、だれもが真の自分を他者に分かってもらえているわけではないこと、あなた自身も親の気持ちを分かっているとは言えないかもしれません。でもそれらを気にすることないのです。あなた自身が、他人と自分を比較したり、他者の評価を気にしたりすることがなくなれば、気持ちは楽になります。なによりも他者の評価が気にならないくらいに、今の時間を充実させて生きて下さい。これからどう生きていくか、どういう大人になるかを考えつつも、今できることに全集中して自分らしく生きていってほしいです。