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公開日 : 2021/04/10

Q.スマホを使うのをやめられません

受験生になればスマホを使うのをやめる、使うのを減らさなくてはいけないとわかっていますがスマホをやめられません。 特にテスト前など、わざわざam.3時とか早起きしても結局はスマホしか触っていないということがおきてしまいます。 こんな状態で高3生(受験生)を迎えて大丈夫か心配です。私はスマホによって将来の夢を奪われたくはありません。そうは考えていても、あと5分が10分になり、10分が・・・・。と、きりがありません。何か方法はないでしょうか。 (高2)
自分を客観的に見つめることで解決の糸口を探そう

この方が回答してくださいました!

中央大学 教授
むらた まさゆき
村田 雅之 先生

中央大学国際情報学部教授。東京工業大学工学部社会工学科卒業、同大学院理工学研究科社会工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。東京工芸大学芸術学部デザイン学科准教授、同大学院芸術学研究科メディアアート専攻教授、中央大学総合政策学部教授などを経て2019年より現職。「デジタル/コミュニケーション」(分担執筆:中央大学出版部)、「国際情報学入門」(分担執筆:ミネルヴァ書房)、「映像制作で人間力を育てる」(共著:田研出版)、「はじめて学ぶ社会学(第2版)」(共著:慶應義塾大学出版会)など。



 スマホをお使いになっている目的が、「友人への即時返信」なのか、「動画視聴」なのか、「ネットゲーム」なのか、などによって、お答えする内容は変わってくるでしょう。とりあえず、「すぐに返信しないといけない友人関係の問題」ではなく、「動画視聴やゲームなどに伴う長時間利用の問題」として、考えてみることにいたします。 


 ここでは、いくつかの方法を、かりに提案してみることから始めましょう。



スマホを使えない状況にしてみよう


  一つ目は、「使いたくても使えないようにする方法」です。夜間はご家族に預けるなどして、「スマホそのものを物理的に遠ざける方法」や、各種の「スマホ依存対策アプリを導入する方法」があります。しかし、この方法は、「将来の夢を奪われたくはありません」とまで、切羽詰まってこのページに書き込まれているということは、すでに試みられているのかもしれません。



スマホを勉強に有効活用してみよう


  そこで二つ目ですが、「使うのをやめる/減らす」のではなく、開き直って、「受験に役立つように(積極的に)使う方法」です。すなわち、「使うのを減らさなくてはいけない」と考えなくてもよいように、スマホを「学習用マシン」として(も)使う、という考え方です。そして、スマホにさわったら必ず○講座受講しよう、のように「自分ルール」を決める、という方法です。しかし、この方法には、「タイミング」という弱点があります。かりに「自分ルール」設定がうまくいって、スマホでの学習時間を増やすことに成功しても、使う「タイミング」が深夜になると、学校に行っている時間に眠くなってしまい、結局は総合的な学習効率が下がってしまいます。 



スマホを使う意味を客観視してみよう 


 最後に、三つ目の方法について、お話しさせてください。せっかくおたずねくださったのですから、かりに「見当違い」になってしまっても、お友達や先生やご家族が、あまりふれない方向からお答えすることを、試みてみたいと思います。それは、スマホを使うことが、自分にとってどんな「意味」があるのか、「客観視」してみることからはじめる方法です。

 

 奇妙に聞こえるかもしれませんが、あなたがスマホを使うのが、ほんとうは、「(スマホを使いたいからではなく)別の目的からなのではないか」と考えてみることです。もっと踏み込むなら、「(スマホを過度に使うことによって)勉強や受験の『不安』から遠ざかろうとしている」のかもしれない、と考えることです。 


 さて、受験勉強を始めると、できない問題に出会うことは、避けられません。受験の足音が聞こえ始めた「高2」とのことですから、できなければ、どうしても不安になるでしょう。そこで、何らかの理由で、勉強を「することができない」状況になってしまえば、漠然とした「将来への不安」は深まりますが、一方で「目の前の問題ができない」ことによる「より生々しい不安」を突き付けられることはなくなります。そう考えると、両方を「天秤にかけた」とき、参考書ではなく、むしろスマホに手を伸ばしてしまうことになってしまうのかもしれません。 


 「社会心理学」に、「セルフ・ハンディキャッピング」という概念があります。ざっくり言うと、あらかじめハンディキャップを自分に与えるような行動をしたり、ハンディキャップがあることを主張したりすることです。たとえば、試合の直前なのに、わざと調整をさぼったり、試験の前日なのに、気になっていた小説を急に読み始めたりした経験はないでしょうか。また、テストの直前になると、聞かれてもいないのに「全然準備できなかった」と声高に話したり、試合直前になると、毎回「きょう肩が不調で…」と急に言い出したりする人を、見たことがないでしょうか。なぜこんな奇妙なことをするのでしょう。これは、成功すれば、それほど不利な条件があったのにすごい、と自分にも他者にも示せますし、失敗しても、言い訳や弁解ができるからです。こんな便利な方法を、人はそう簡単には手放せません。ゆえに、日常のあちこちで、よく見ることができるわけです。 


 長い説明になってしまいましたが、あなたが、無意識のうちに「スマホに時間を奪われること」を選んでしまい、「結果として自分を不利な立場に追い込むこと」によって、「セルフ・ハンディキャッピング」に陥っていないかが、少々心配なのです。 

 

 先ほども申し上げましたが、以上はあきらかに「見当違い」なのかもしれません(ごめんなさい)。また、あてはまっている、と気づいたからといって、根本的な不安の解消に、直結するわけではありません。 


 しかし、得体のしれない何かに、とりつかれたかのようにスマホに手を伸ばしてしまう理由の輪郭を、わずかでも感じることができれば、状況改善への第一歩を踏み出せるのではないでしょうか。



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