
最新情報
-
株式会社小松製作所
高橋 克幸 さんTOSHIN TIMES 2025年04月号掲載
-
グローバル人財育成編 株式会社セブン-イレブン・ジャパン
小林 亜弥 さんTOSHIN TIMES 2025年03月号掲載
-
関西電力株式会社
上田 晃穂 さんTOSHIN TIMES 2025年02月号掲載
-
パイオニア株式会社
須藤 誠 さんTOSHIN TIMES 2025年01月号掲載
-
ソニーグループ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
横田 莉子 さんTOSHIN TIMES 2024年12月号掲載
-
株式会社安川電機
森若 璃菜 さんTOSHIN TIMES 2024年11月号掲載
-
株式会社ダイセル
三好 史浩 さんTOSHIN TIMES 2024年09月号掲載
-
一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
石川 沙羅 さんTOSHIN TIMES 2024年08月号掲載
-
オークマ株式会社
加藤 由佳 さんTOSHIN TIMES 2024年06月号掲載
-
住友商事株式会社
久保 颯 さんTOSHIN TIMES 2024年04月号掲載
総合住宅メーカー 編
「建築の工業化」を企業理念とする大和ハウス工業は、1955年(昭和30年)創業の総合住宅メーカーだ。同社は住宅、分譲マンション、商業施設、物流施設などの建設を多数手掛け、近年では海外の工業団地開発にも参画している。今回は、リオ五輪に向けたオリンピック選手用強化プールの建設に携わっている同社の薄波秋帆氏と中村貴彦氏のお二人にご登場いただき、建築工事を管理・進行していく立場から、手掛けてきたプロジェクトやプール建設への想いを語ってもらった。
迅速、正確、安全な仕事で
信頼されるプロフェッショナルに!

大和ハウス工業株式会社 東京本店
建築事業部 工事部 工事課 二級建築施工管理技士(建築)
薄波 秋帆 (うすなみ あきほ)
1990年 東京都生まれ
2009年 東京都立 竹早高校 卒業
2013年 日本大学 生産工学部 建築工学科 卒業
大和ハウス工業株式会社 入社
本社 技術本部 設計施工推進部 所属
2015年 東京本店 建築事業部 工事部工事課へ異動
初めての仕事は 東京ドームよりも大きい倉庫

建築施工管理技士は、屋根、塗装、内装仕上げ、配管など「施工」に関するすべての業務を管理・統括する。建築士が「設計」のプロフェッショナルなら、建築施工管理技士は「工事」のプロフェッショナルと言えるだろう。
「今日はスーツを着ていますが、普段は作業服にヘルメット姿です」と話すのは、大和ハウス工業株式会社入社3年目の薄波秋帆。薄波も二級建築施工管理技士(建築)の資格を持つ、工事のプロフェッショナルだ。
初めて施工に関わった物件は、日本を代表する企業の物流倉庫だった。約7万8000㎡の物件。東京ドームの建築面積が4万6755㎡というから、どれだけ大規模な建築かが推測される。
薄波の担当は地上6階の建物のうちの、トラックが上り下りする「ランプ棟」と呼ばれる部分。主な業務は、別の部署から上がってきた設計図と構造図をもとに施工図および工程表を作成し、各業者に手配し、進捗状況をチェックすること。
「すべてがわからない尽くしでした。上司や職人さんにゼロから質問を重ねて、フォローしてもらいながら、その日のスケジュールをやっと終える毎日でした」
螺旋を水平に保つには? 脳内を3Dにして大奮闘!
「上司にポイントごとの柱を目印にレベルを管理する方法を教えてもらい、乗りきりました。現場では頭の中を3Dにし、フル回転でした」
失敗は数え切れない。やるべき工程を抜かして次の作業に進めてしまったこともある。「なぜ、もっと早く言わないのか」と職人さんに何度怒られたかわからない。それでも百戦錬磨のプロ集団。二度手間になっても最後はしっかり帳尻を合わせてくれた。
次から次へとやるべき仕事がいっぱいで落ち込む暇もなかった。薄波は前日に何があっても、朝になると笑顔で現場へ向かった。上司や先輩が見守ってくれているという安心感もあった。
規模が大きすぎて「正直、本当に工事が進んでいるのか実感できなかった」という薄波。あるとき上司の車に乗って、建設現場の全体像を見る機会があったという。
「思っていた以上に形になっていて驚きました。感動のあまり、〝こんなにできている!?って声をあげたほどです(笑)」
2015年3月31日、物流倉庫は無事に完成し、依頼主に引き渡すことができた。
模型に感動して建築分野へ モノづくりの喜びに開眼
「当時はいろいろな方面に興味があり、進む道が定まっていませんでした。それが住宅模型を一目見て〝これだ?と直感したんです。自分の手で作れたらどんなに楽しいだろうって思ったんです」
そして、日本大学建築工学科・居住空間デザインコースへ進学。大学では建築の基礎知識をひととおり勉強すると同時に、与えられた課題に応じて設計図を描き、模型をつくる練習を積んだ。特に印象に残っているのは大学一年のグループ製作。「商業施設」という課題で「ガールズ・ファクトリー」という名称の建築模型をつくった。
「化粧品・ネイル・服のショップ、美容院、ファッションショーなど綺麗になるための施設が集まっているビルです。そこへ行ったら〝完ぺきなガール?になって出てくるというのがコンセプト。女性5人のグループだったので、自分たちが本当に形にしたい施設をつくろうという意気込みで取り組みました」
「自分の発想を表現したいというより、図面が形になっていく過程に関わるのが好きなんです。私にとっては物流倉庫もガールズ・ファクトリーも完成したときのわくわくする気持ちに変わりはありません。」
そして現在取り組んでいるのが、2016年のリオオリンピックに向けた施設だ。トップスイマーたちが練習を重ねる地下2階、地上4階建ての選手強化プールで、競技本番で使われるプールと同様の水深3m、長さ50mのオリンピック仕様だ。実は、これまで国内でオリンピック基準を満たすプールはほとんどなく、それゆえ競泳選手たちは、本番と異なる環境で練習を行ってきた経緯がある。そこで、入江陵介選手も所属するイトマンスイミングスクールが建設に乗り出したのが、今回の強化プールなのだ。
最初に設計図を見たときの薄波の感想は、「これまでのスポーツ施設のイメージを覆す、お洒落な印象」であった。薄波自身、幼少期にスイミングスクールに通っていた経験があり、プール建設への思い入れも強い。
「プールの一部がガラス張りになっていて、泳ぎのフォームを観察できたり、解析システムが併設されたりしています。まさにオリンピックを目指すトップスイマーのための施設といえます」
現在は基礎工事の段階。言うまでもなく、建物を支え安定させる土台づくりであり、最重要工程の一つだ。
建築は土地環境や建物の形状など一つひとつ異なる。今回もまた初めての体験ばかりだろう。周囲の人たちに教えを仰ぎつつ進める「勉強の日々」に変わりはないが、オリンピックに関連する施設を手掛けられることに、大きな期待を抱いているという。
来年には、一級建築施工管理技士の受験資格である「実務3年以上」という条件をクリアする。技術のレベルアップをはかり、「一日も早く信頼されるプロフェッショナルになりたい」と目を輝かす。
一番のやりがいは「達成感」!
全力を出しきる現場づくりを

大和ハウス工業株式会社 東京本店
建築事業部 工事部 工事課 一級建築施工管理技士
中村 貴彦 (なかむら たかひこ)
1978年 神奈川県生まれ
1997年 東海大学付属 高輪台高校 卒業
2000年 東海大学 工学部 建築学科 卒業
2012年 大和ハウス工業株式会社
東京本店建築事業部 工事部工事課 入社
プール建設には良好な地盤が必須

当然だが、プール建設に水漏れは厳禁だ。しかし、施工の視点からみると難度が低い訳ではない。「特定の場所に相当な水圧がかかる物件は通常ありませんので、業者や職人さんと綿密に打ち合わせをしながら慎重に進めていきます」
基礎工事は建築構造物を安定させるために行う。地盤調査を行い、土地の特徴や建物の条件に適した基礎づくりが必要だ。日本で多いのは「杭基礎」である。表面の地面が柔らかい場合、その下にある固い地盤まで杭を伸ばすことで、地震が起きても建物をしっかり支えることができる。また、建物を支えるのに十分な固さを持つ地盤は「支持層」と言われるが、浅い位置に支持層があることがある。
「そういう場合は杭を打たずに地盤の上に直接建物を建てます。〝杭基礎?に対して〝直接基礎?と言われます。今回のプールでは〝直接基礎?を適用しますので、今は支持層を掘り起こしている段階です」
「施工チームは6名で、小さな会社と同じです。部下に任せられるところは任せ、彼らが初めてのところは教えながら、自分自身の役割と同時進行させていきます」。現場は常に少数精鋭体制。チームメンバー全員が全力を出しきることが必須条件だ。
大学で経験した挫折と自分の適性
高校時代は理系科目が好きで、将来は建築家になろうと思った。大学は迷うことなく、工学部建築学科へ進んだ。ここで、転機を迎える。
「実際に設計図を描いてみると、自分にいかにセンスがない?のかを実感しました。そこで自分は建築家向きではないのではないかと、考え始めました。一つの挫折かもしれません」
その代わり、「模型づくり」は断トツに上手かった。建築模型をつくりはじめると、夢中になって気がつけば朝を迎えていたことも珍しくなかった。そこで、興味が少しずつ設計から施工に移っていった。そして、施工に携われる建築施工管理技士という仕事を知ったのが、研究室選びのときだった。
自身が手がけた建築はすべて思い入れがあり、記憶にある。なかでも一番印象に残っているのは、施工のすべてを手掛けたある6階建てのマンションだ。それまでは何かあれば上司がフォローしてくれたが、そのときは現場のトップとして施工工事のすべてに責任を持ち、仕切らなければならなかった。完成したビルを引き渡す際、依頼主から「中村さんが担当でよかったです」と声をかけられたときは心の底から嬉しかった。
「この業界の人間に仕事のやりがいを尋ねたら、間違いなく全員が達成感?と答えると思います」
そして、中村が今強く感じることがある。「社会人になり、建築現場で仕事をしていると頻繁に感じることがあります。それが、大学での講義やゼミで学んだ内容が現場で生きた瞬間です。大学で勉強していると、この知識がどんなときに役立つのか想像がつかないことが多々あります。受験勉強でも同じでしょう。しかし、しっかりと身についた知識は人生のどこかで確実に生きています」
挫折を経験しながらも、夢に向かって一所懸命に邁進した中村は、高校生にそうエールを送ってくれた。
Q&A
仕事をするうえで手放せない「三種の神器」は?

スケール、ヘルメット、消せるボールペンです。スケールは設計図にない詳細な数字を把握・確認するために使います。また、現場ではヘルメットを必ず装着します。自分の身は自分で守るが基本です。ボールペンは設計図をベースに施工図を作成するときに使います。書き直しの跡など余計なものを残さないようにしています。