最新情報
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パイオニア株式会社
須藤 誠 さんTOSHIN TIMES 2025年01月号掲載
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ソニーグループ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
横田 莉子 さんTOSHIN TIMES 2024年12月号掲載
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株式会社安川電機
森若 璃菜 さんTOSHIN TIMES 2024年11月号掲載
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株式会社ダイセル
三好 史浩 さんTOSHIN TIMES 2024年09月号掲載
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一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
石川 沙羅 さんTOSHIN TIMES 2024年08月号掲載
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オークマ株式会社
加藤 由佳 さんTOSHIN TIMES 2024年06月号掲載
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住友商事株式会社
久保 颯 さんTOSHIN TIMES 2024年04月号掲載
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株式会社伊藤園
寺口 寛司 さんTOSHIN TIMES 2024年03月号掲載
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NTN株式会社
宮田夏海 さんTOSHIN TIMES 2024年02月号掲載
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マツダ株式会社
今田 道宏 さんTOSHIN TIMES 2024年01月号掲載
半導体業界
自動車の自動運転技術に欠かせないセンサーの回路設計に従事する横田莉子さん。物理学への情熱から工学の道へと進み、最先端の技術開発に携わる。学生時代から培ってきた探究心と挑戦する姿勢で、テクノロジーの未来を切り拓く若きエンジニアに話を聞いた。
自動運転の未来を支える
半導体設計を担うエンジニアの情熱
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 車載事業部、ロジック設計エンジニア
横田 莉子 (よこた りこ)
1996
埼玉県生まれ。学ぶことが好きで、
自分から中学受験をしたいと両親にお願いした。
2009
神奈川県 私立 フェリス女学院中学・高等学校入学。中高
ではテニス部に所属。文武両道で部活も勉強も全力投球。
2016
東京大学入学。高校時代は理学部物理学科志望で
あったが、世の中に応用する工学に魅力を感じ、
工学部電気電子工学科に進学。その後の人生を
変えることになる、半導体に出会う。
2020
東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻
修士課程に進学。
2022
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 入社。
若手エンジニアとして現在に至る。
自動運転技術の発展により、私たちの暮らしは大きく変わろうとしている。交通事故の減少、高齢者や障がい者の移動支援、渋滞の緩和など、その恩恵は計り知れない。この革新的な技術を支える重要な要素の一つが、センサーだ。周囲の状況を正確に把握し、瞬時に判断を下すために、高性能なセンサーが不可欠なのである。
そんな最先端の技術開発に携わるのが、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社で働く横田莉子さんだ。入社3年目の若手エンジニアながら、自動運転に用いられるセンサーの回路設計という重要な仕事を任されている。
「私が担当しているのは、車に搭載して周囲との距離を測るSPAD(スパッド)センサーの回路設計です。これは高精度な距離測定が可能な半導体センサーのことで、私はコンピュータ上でプログラミングを行い、センサーの論理回路を設計しています」
設計の過程では、創意工夫の余地が大いにあるそうだ。例えば、単に和をとるだけでも、一項ずつ順に足していく方式と、トーナメントのように足していく方式では、速度や回路の大きさが変わってくる。「同じ入力から同じ出力を得られても、その過程をどう設計するかで、処理時間や回路の大きさが変わります。そういった部分を自分で考えていくのが面白いですね。自分なりに考えた方法がうまくいったときは、やりがいを感じます」
物理学への情熱から工学の道へ
横田さんが半導体の世界に足を踏み入れたのは、物理学への純粋な興味がきっかけだった。横田さんは、幼少期から横浜市で育ち、中学・高校時代を神奈川県のフェリス女学院で過ごした。
「高校時代、特に物理が好きでした。自分で考えることも好きだったので、もしこうだったらどうなるだろう、と考えてみたりして。物理という科目自体にすごく魅力を感じていました」
その情熱は、理論物理学者を目指すほどだった。しかし、大学に入学してからその思いは少しずつしていく。「大学に入って実際の学問に触れたときに、純粋な物理学を探究するよりも、実際に世の中に応用する工学の方が面白いと感じるようになりました」
横田さんは、専門課程で工学部電気電子工学科を選択。そして、半導体の授業に出会う。「これがすごく楽しくて。半導体は高校生の時に興味があった量子力学と社会をつなぐ中間のような分野でした。物理的なことを考えつつ、社会に応用できるのが魅力的でした」
修士課程では、太陽電池の高効率化の研究に没頭する。「インジウム、ガリウム、ヒ素という材料を使った太陽電池の高効率化に取り組みました。その構造を工夫して、実際に太陽電池を作り、高い効率が得られることを証明しました」
その研究成果は、応用物理学会で認められ、全発表数のうち1.5%以内の優秀な発表に与えられる講演奨励賞を受賞。「若手を対象とした賞ではありましたが、受賞者にドクターやポスドクの人もいる中で、修士1年生のときにその賞をもらえたのは、研究者としてものすごく自信になりましたね」
文武両道の学生生活
横田さんの学生時代は、勉強だけではなく部活動にも力を入れた充実したものだった。中学・高校時代は硬式テニス部に所属し、大学ではラクロス部のマネージャーを務めるなど、常に文武両道の姿勢を貫いた。
「中高はずっとテニス部に入っていたので、部活が1番の思い出です。」テニス部での思い出を尋ねると、「思い出すのは何気ないシーンだったりします。例えば、部活終わりにみんなでアイスを食べたこととか(笑)」
そんな何気ない日常の中で、横田さんは将来について考えを巡らせていたという。「学校の近くのみなとみらいによく行っていて、そこで将来のことを友人とたくさん話していました。そのときの友人も今、本当にいろんな業界で活躍していて、中高からいい仲間に恵まれていたなと思います」
大学に入ってからは、ラクロス部のマネージャーを務めた。選手ではなくマネージャーを選んだ理由については、「データの分析をしたり、どういうふうに効率よく運用すれば良いか考えたり、マネージメントの部分でチームに貢献するかたちが、自分に向いているなと思いました」と説明する。
その日々はなかなかハードだった。「土日を含む週5日間部活があり、平日は朝4時に起きて、始発の電車に乗って大学に行っていました。リーグ昇格の目標に向かって、チームで頑張っていて、4年生のときの引退試合でそれが叶いました。大変なことも多かったですが、ここまで来られてよかったなと心から思える瞬間でした」
多様な事業展開に魅力を感じて
大学院修了後、横田さんはソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社に入社。その理由を聞くと、「好きな半導体を仕事にできるというのも大きかったですが、ソニーグループが多様な事業を持っているところにも魅力を感じました」と語る。
「今は社会の変化が大きく速い時代だと思っています。大きな企業であっても、事業の柱が一つしかないと、変化の波にのまれてしまうこともあります。ソニーグループは幅広い事業に取り組んでいるため、安心感がありました。」
横田さんの1日は、朝9時半から始まる。午前中は主に設計作業に集中し、午後には会議や打ち合わせを実施する。「会議では、設計内容についての議論をしたり、プロジェクト全体に関する進捗報告をしたりします」
入社3年目を迎え、横田さんは徐々に責任ある仕事を任されるようになってきたという。
「3年目になってかなり仕事を任せてもらえるようになったと感じています。設計の中の一つのブロック、一つのパートを任されていて、そこは横田さんが責任を持ってやってくださいね、と言われるようになりました」
センサー開発プロジェクトは、100人以上の人々が関わる大規模なものだ。そんな中で、横田さんは自分の担当部分に全力を注ぐ。
「まだ半人前ですが、チームの一員として認められていると感じられるのは嬉しいです」
プロジェクトの期間は製品によって異なるが、横田さんが設計者として関わる期間は通常6〜8カ月程度。「締め切りの直前が特に忙しくなります。ときには遅くまで仕事をすることもあります」と、忙しさの中にも充実感を覚える日々だ。
最後に、受験生の後輩たちへのメッセージを聞いた。
「まずは自分の道を限定せずに、今興味のあることを突き詰めてほしいと思います。勉強だけではなく、習い事やクラブ活動を頑張ることも、中高生のときにしか体験できない貴重な経験だと思うので、そういったところも大事にしてほしいです」
そして、仕事をするうえで大切なのは「自分で考える力」だと横田さんは強調する。
「与えられた仕事をこなすだけではなくて、どのようにプラスアルファの価値を出すかを考える力が求められていると思います。そういった力を身につけるには、いろんな人と関わって過ごすことも大切です。その力は中高生のときから身につけていくのがいいと思います」
Q&A
進む道はいつどのように決めるべきですか?
高校生の段階で進路を決めきる必要はないと思います。私自身、高校では理論物理学を目指していましたが、大学で工学に興味が移りました。大切なのは、今興味のあることを幅広く学ぶこと。将来の可能性を狭めず、さまざまな学問に触れてください。そうすれば、将来どんな道にも進めるはずです。