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広告業界 編
株式会社電通は、およそ7,500人の社員を擁する日本最大の広告会社である。いまや、その事業領域は広告制作に留まらず、社会や企業が直面するあらゆる課題の解決に取り組んでいる。それだけに、電通では多彩な人材が活躍中だ。今回ご登場いただく土居正崇氏は、大学でのロボット研究を経て電通に入社したという異色の営業マン。東進との関わりも深く、講師陣が次々に登場する「生徒への檄文」篇のCMを提案した人物でもある。そこで今回は、その東進CM制作の過程や、「今でしょ!」の林修先生と大手菓子メーカー・ロッテとのコラボレーション企画の裏話などをお伺いした。
広告を通じて企業の課題を解決し、日本経済を活性化したい!

株式会社電通 第二営業局 営業部
チーフアカウントエグゼティブ
土居 正崇 (どい まさたか)
1977年 福岡県北九州市生まれ
1995年 私立西南学院高校 卒業
2001年 早稲田大学 理工学部応用物理学科 卒業
2003年 早稲田大学大学院 理工学研究科物理学及応用物理学専攻
同年 株式会社電通 入社 第二マーケティングプロモー
ション局 配属 第二営業局アカウントプランニング部を経て、現在に至る
東進の人気CM「生徒への檄文」篇はこうして生まれた

「その頃はちょうど、東進がどんどん拡大していた時期です。そうした中にあって、私たちに与えられたミッションは、二つありました。一つは、今後解決していかなければならない課題を見つけ出すこと。二つめが、課題解決に向けた戦略を打ち出すことです」当時の土居の仕事は、客観的なデータを集めて解析し、そこから具体的な戦略計画を導き出す「ストラテジープランナー」と呼ばれる役割だった。だが一般に、広告会社の仕事は商品の広告方法の提案に留まることが多い。事業戦略を決めるのは、あくまで経営者であるという考え方が根強くあるからだ。今でこそ多くなったと土居は語るが、その当時は事業の根幹にまで踏み込んだ提案は珍しかった。
「調査をしてみると、高校生や保護者が予備校選びに関して重視している点、あるいは、東進がどのようなイメージを持たれているかなどが見えてきました。もともと東進には最高レベルのコンテンツや指導法がありながらもそれが十分に伝わっていないと感じました。それらのデータを示しながら、どこに力を注げばもっと多くの人に東進の良さをわかってもらえるかを考えたわけです。かなり赤裸々な内容でしたので、もしかしたら怒られるかもしれないと思いましたが、それよりも冷静かつ客観的な提案をすることを目指したのです」
そんな土居の姿勢は功を奏した。規模を拡大して、さらなる調査のゴーサインが出たのだ。この調査データが人気CM制作の基礎となった。その後、東進の知名度が格段に向上したことは前述のとおり。データに基づいた土居の提案に、間違いはなかったのである。
ロボット開発から電通へ入社を決めたその理由とは?
「もともとのきっかけは、2002年の日韓ワールドカップでした。その開催に電通が関わっていることを知って興味を持ったんです」
ちょうど就職活動中だった土居は、そこで実際にOB訪問をしてみた。すると、電通という会社は「企業や商品の良いところをうまく引き出して、世の中に伝えていく」会社であることがわかった。世の中をポジティブにする企業活動に、土居は強く惹かれた。
研究職は、たしかにひとつの領域を深く突き詰めていく醍醐味がある。しかしそこで接する人々は、おのずと同じ研究をしている研究者たちに限られてしまいがちだ。一方、電通での仕事は、企業経営者を始めとするさまざまな立場の人たちと関わりながら成し遂げていくものである。パソコンに向かって、日々ロボット制御の研究を続けていた土居の目に、その姿は極めて新鮮なものに映った。
「電通の仕事は、幅広くいろんな業種と接点を持って、企業や経営者がどんなことを考えているのかを訊いていく仕事です。それは人間同士のリアルなやり取りでしか成しえません。ロボットの研究をしていたからこそ、逆に、人と人とのコミュニケーションが鍵となる仕事に魅力を感じたのかもしれません」
だから営業への異動も、土居にとっては念願のものといえた。
「もちろん、ストラテジープランナーの仕事も充実したものでした。けれども本当の意味で、最後まで責任を負うことができたかと自問自答してみると心もとない。一方で営業の仕事は、プロジェクトのすべての過程に関わることになります。巨額の費用もやり取りするわけですから責任も重大です。だからこそやりがいがあるし、自身の成長にもつながる。そう確信していましたから、入社してからずっと営業をやりたいと思っていました」
東進×ガム!? 意外な組み合わせで大成功

「近年では、集中力アップやあごを鍛えるといったガムの効用が注目されています。そうしたガムの良さを、とりわけ若い人たちにアピールすることが私の現在のミッションになります。ではどうしたら、特に中高生の間で話題にしてもらえるようになるか。そこで考えたのが、東進の林修先生とのコラボレーションでした」
制作されたCMは「今でしょ!」の決めゼリフで大ブレイク中の林先生が、黒板の前で「噛む」の例文を解説するというもの。最後に「じゃあ君は何を噛むの?」と問いかける林先生が「ガムでしょ!」と締めくくる。東進のおなじみのCMと思いきや、じつはロッテのガムのCMだったという、視聴者の意表を突く内容だ。
「もともとこの企画はインターネットを中心に展開させる予定でした。けれども、インターネットだけで話題を拡散させるというのは、実は難しい。そこで考えたのが、林先生による始球式をきっかけにしたCMのPRでした」
新CMの放送開始は今年の5月だが、土居たちはそれに先立つ一カ月前に、布石を打った。それが千葉ロッテマリーンズの本拠地であるQVCマリンフィールドでの林先生の始球式だ。話題の林先生が始球式を務めるとなると、新聞やテレビなどでも報道される。当然、ロッテのガムのCMの一環であることも告知されるから、広告効果も絶大だ。それがツイッターなどのソーシャルメディアで話題になれば、インターネット上の特設サイトへのアクセスも増える。こうした土居の戦略は、見事に的中。テレビなどの既存メディアと、新しいソーシャルメディアとの好循環を生み出し、広告戦略の新たな可能性を拓いた。
「実は今、林先生も含めて、いろんな東進の先生たちにご登場いただく企画も進めています。私が窓口となって、CM&映像制作、ウェブ制作やプランナーなど20名ほどのチームで取り組んでいるところです。ぜひご期待ください」
求められるのは「対応力」と「論理力」そして「ゴールをイメージする力」
「今回の例では、若い人たちにガムをアピールしたいと考えていたロッテと、高校生の皆さんを対象とする東進をクロスさせたわけです。そうすると、よりおもしろいことができたり、新しい価値が生まれてきます。もちろん過去のお付き合いがなかったら、東進に相談することもできなかったでしょう。業種をまたいだ幅広い経験を積むことのできる電通だからこそ実現できた仕事だといえます」
そんな土居に、日々求められる力を訊くと、3つの答えが返ってきた。一つめは「対応力」。顧客の求める要望にスピード感を持って対応することは、ビジネスパーソンにとって必須の能力だ。二つめが「論理力」。企画書を作成するとき、あるいは顧客への提案時に筋道を立てて論じることができなければ、自分の意図も正確に伝わらない。そこでとりわけ重要なのが、三つめの力である「ゴールをイメージする力」だと土居はいう。
「僕は”落としどころ”という言い方をしていますが、常にゴールを頭に思い描く。そうすることで、今やるべきことも明確になってきます。高校生であれば、自分は将来、何をやりたいのかという目標を持つとよいのではないでしょうか」
では、土居自身は今、どんなゴールを目指しているのだろうか?
「今はガム全般を担当しているわけですが、菓子市場を盛りあげることによって、日本の消費を高めることができればと考えています。たとえ担当する業種が変わったとしても、常にその市場全体を大きくしていくような仕事をやり遂げていきたいですね」
入社して10年。土居の言葉には、若きリーダーの気概が垣間見えた。(文中敬称略)
Q&A
仕事をするうえで手放せない「三種の神器」を教えてください。
営業の仕事の醍醐味はどんなところにありますか?
電通の社風を教えてください。
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広告業界で働くには
広告業界の職種は多数あるが、主なものは次のとおり。 【1】営業部門クライアント(広告主)の課題を解決するための広告戦略を立案する中心となる存在。常に顧客と最前線で折衝を行い、予算の管理から制作の統轄までを行う。 【2】マーケティング部門市場を調査し、生活者の好みやライフスタイルに合わせて広告の基本戦略を策定する。 【3】制作部門 (1)コピーライター広告制作における「言葉」の責任者。広告のキーメッセージとなるキャッチフレーズや、詳しい商品の説明文であるボディコピーなどを考える。 (2)アートディレクター広告のビジュアル面での制作責任者。デザイナーとして経験を積んでからなることが多い。広告に使われる写真のディレクションから、文字のタイポグラフィ、レイアウトの知識など幅広い美術の知識が求められる。 (3)CMプランナーテレビCMなど映像の企画・制作を担当する人。コピーライターからなるケースも多い。絵コンテを描いてCMの骨組みを作る。 高校、大学を卒業して広告会社の採用選考を経て働くことが一般的。幅広い知識が必要とされる業界であるため、特に優遇される学科などはないが、情報技術などの資格を持っていると優遇されるケースもある。また、国際的な企業活動を行う会社が増加し、語学力が求められる会社も増えている。何より必要なのは、顧客の抱えているニーズを的確に捉え、課題を解決する能力。そのためのコミュニケーション能力はもちろん、変化する時代や生活者の動向をキャッチする情報収集能力が必要だ。