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自動車業界
父親の仕事に憧れて志した、ソフトウェア・エンジニアへの道。大学院で博士号を取得後、 「社会に貢献できる仕事」を求めて、トヨタ自動車へ。トヨタでは、インターネットでつながる車「コネクティッドカー」から得られるデータを分析し、ドライバーのサポートや歩行者の安全、町づくりにもつながる仕事に熱中している。
自動車メーカーで働くソフトウェア・エンジニアデータを解き明かし社会に貢献する仕事
トヨタ自動車株式会社 コネクティッド先行開発部
﨑山 亮恵 (さきやまあきえ)
1991
東京都生まれ。
小学生の頃は「ずっと動いていたいタイプ」だったが、中学生になると方向転換し、美術部と家庭科部に入部した。
2007
東京都立戸山高等学校入学。
2年生の時、ブラスバンド部で指揮者を担当した。
2010
東京農工大学工学部入学。
学部生時代は学園祭実行委員としても活動。
2014
東京農工大学大学院の生物システム応用科学府に進学。
学会の発表会で在学中に15回も海外出張に行ったのが良い思い出。
2018
トヨタ自動車株式会社に入社し、現在に至る。
日本では今、約8000万台の自動車が走っている。そのうち約200万台は、トヨタ自動車が作っているインターネットでつながる車(コネクティッドカー)だ。2015年からコネクティッドカーの本格展開を始めたトヨタは、すべての車をコネクティッド化することを宣言しており、2025年には約500万台に増えると予想している。
コネクティッドカーは、運転の様子や車両の状況、車両が走った環境を把握することができる。さらにさまざまなセンサーが搭載されており、それらのデータを通して運転のアドバイスや車両の不具合の解消、渋滞の緩和や道路の劣化状況を把握して補修につなげることも可能になる。
そのデータの分析や活用を担っているのが、コネクティッド先行開発部。トヨタが掲げる「いい町、いい社会」づくりに役立てるためにどんな仕事をしているのか、2018年に入社以来、この部署で働くソフトウェア・エンジニアの﨑山亮恵さんに話を聞いた。
練習に明け暮れた高校のブラスバンド部 父親の仕事に憧れて情報工学科に進学
1991年に東京で生まれた﨑山さん。子どもの頃は「めちゃくちゃ、やんちゃ」で男の子と外で走り回っていることが多かったが、自宅のパソコンで遊ぶのも好きだった。「小学生の頃からパソコンでゲームをしたり、絵を描いたりしていました。インターネットの掲示板で友だちも作りましたね」
パソコンが身近にあり、比較的自由に使うことができたのは、父親がソフトウェア・エンジニアだったから。いつも家でパソコンに向かってプログラミングしている父親を見て、その後ろ姿に憧れた。「プログラミングが何かは理解できなかったんですけど、プログラミングってかっこいいしやってみたいなと思っていました」
高校は、「すごく自由な校風」に惹かれて東京都立戸山高校に進学。﨑山さんは、100名を超える部員が所属するブラスバンド部の活動に没頭した。文化祭での演奏会を最大の目標に据えていて、その日に向けて朝から晩まで練習に明け暮れた。
高3秋の最後の文化祭まで部活をやり遂げながら、将来目指したのは、ソフトウェア・エンジニア。父親の背中を追うように、情報工学科を志望した。その結果、第一志望にはわずかに手が届かず、後期試験で合格を掴んだ東京農工大学に進学することになった。
「正直、もうちょっと勉強すればよかったなという思いはあります。浪人しようかなという気持ちもありましたが、せっかく農工大に合格したんだから、そこで頑張って学ぼうと思いました」
授業と研究に熱中し、大学院で博士号取得 「社会貢献」を目標にトヨタ自動車に就職
東京農工大学は、農学部と工学部のキャンパスが分かれていて、学部ごとに専門知識を深める形になっている。初めて専門的にソフトウェアやハードウェアについて基礎から学んだ﨑山さんは、大学での授業が新鮮でおもしろく感じたという。特にプログラミングは、「パズルを解いている感じで、すごく楽しかった」と振り返る。
4年生になり、画像や音声を圧縮する技術のベースとなる信号処理の研究室に入ると、その研究にも熱中。大学院に進み、博士号も取得した。「研究では、既存の手法から新しいものをどう生み出していくかが問われるので、課題を見つける発想力と、それにどう対処するのかという分析力や思考力が求められます。そういう力を身につけられたのは、大学院に進学してよかったことですね」
そのまま大学教員の道に進む選択肢もあったが、大学で学んだデータを扱うスキルを生かし、社会に貢献できる仕事がしたいと就職活動を開始。企業の採用試験を受けるなかで、トヨタでの職務に可能性を感じた。
「トヨタのコネクティッドカーが売り出されたばかりで、集まり始めたデータがこれから活用されるという段階でした。今トヨタに入れば、車や町づくりを通じて世の中を良くしていくことに貢献できると思ったんです」
2018年春、トヨタに入社すると、希望どおりコネクティッドカーのデータを使うコネクティッド先行開発部に配属された。父親には「データ活用って今すごく重要な領域だから、いいんじゃない」と言われたそうだ。
﨑山さんの担当は、車両データの分析。コネクティッドカーは、運転の様子や車両の状況、車両が走った環境を把握できるのがメリットだ。そのデータを使ってドライバーや社会のためになる「新たな価値」を生み出すのが仕事なのだが、それは想像以上にチャレンジングなことだった。
「毎日のように膨大な量のデータが溜まっていきますし、センサーの数も多いので、どのデータをどう見るのかが難しいんです。データ活用の知識だけあればできる仕事ではありませんでした」
他部署と組んで「データの意味」を特定 小さな改善を重ねて町づくりに役立てる
トヨタでの仕事は、それぞれのデータが何を意味するのかを理解するところから始まった。そのために、自動車の研究開発部門の人やトヨタの販売店で働いている担当者など、社内でも車の特性に詳しい人たちとミーティングを重ね、「こういうデータがあるということは、こういうことが言える」と特定していった。それは、お互いにとってとても有益な時間になった。
「例えば車の安全装置は、こういう場面に遭遇したドライバーはこういう対応をするだろうと予測をして作っています。でも、実際にデータを見てみると、こちらが想定していない動きをしていることもありました。そういう気づきから改善が始まるので、いろいろな人たちから話を聞くのはすごく重要だなと感じました」
他部署との共同作業を進めていくうちに、少しずつそれまで知られていなかった重要なデータが浮かび上がってきた。
例えば近年、ブレーキとアクセルの踏み間違いによる事故がよくニュースになっているが、そういう事故を起こした人は、事故の前にもギアを「ニュートラル」に入れたままアクセルを踏み込むなどの踏み間違いをしているケースが多いことがわかった(「ニュートラル」だとアクセルを踏んでも車は動かない)。
この傾向が明らかになったことで、将来的には「ニュートラル」でアクセルを踏み込んだドライバーに向けて、自動的に注意や休憩を促すことができるようになるそうだ。
ほかにも続々と、ドライバーの運転の改善や歩行者の安全につながるような発見が出てきている。「例えば、事故が起きやすいなど世の中でよく指摘されている道路上の危険な地点があります。そこを通行する車のデータを調べたら、ある特徴的な運転の仕方をする人には確かに危険なのですが、一般的なドライバーにとってはそこまで危険ではない場合があるとわかりました」
踏み間違いのケースと同様に、危険とされる地点を通過する可能性がある「特徴的な運転」をする人に向けて警報を出せるようになれば、事故のリスク減少につながるわけだ。
ドライバーの普段の行き先を分析し、おススメの場所を提案するような運転を楽しむためのサービスも考案している。「スキルを生かして社会に貢献できる仕事がしたい」という想いで入社した﨑山さんは、今の仕事に「とてもやりがいを感じています」と笑顔を見せる。しかし、満足はしていない。
「今はデータを活用したサービスを少しずつ出し始めている段階なので、もっといいサービスを出したいという気持ちがすごく強いんですよね。トヨタの車は全国を走っているので、全国の町を良くできる可能性がある。小さな改善を積み重ねることで、いい町づくりのお手伝いができたらなと思っています」
Q&A
どうやってストレスを発散していますか?
趣味は旅行ですね。コロナ前は海外にも行っていましたが、最近は京都や沖縄など国内旅行が多いです。あとは犬が好きで、最近2匹目の犬を飼い始めて、溺愛しています(笑)
今後、どういう仕事が重要になると思いますか?
社会がどんどんデジタル化していくなかで、自動運転をはじめ、世の中の不便をなくしていくためにどうソフトウェアやデータを活用していくのかを考える仕事が重要になってくると思います。