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日本ハム株式会社 IT・DX推進部 リーダー
伊藤 恵里奈 さんTOSHIN TIMES 2026年05月号掲載
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最高検察庁監察指導部長
佐久間 佳枝 さんTOSHIN TIMES 2026年02月号掲載
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株式会社小松製作所
高橋 克幸 さんTOSHIN TIMES 2025年04月号掲載
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関西電力株式会社
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パイオニア株式会社
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ソニーグループ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
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株式会社安川電機
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株式会社ダイセル
三好 史浩 さんTOSHIN TIMES 2024年09月号掲載
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一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会
石川 沙羅 さんTOSHIN TIMES 2024年08月号掲載
食品加工メーカー業界
「言われたとおり」の行動はいらない。物事の本質を見極めて行動をする。そのためには失敗を恐れずトライする――。これが食肉最大手メーカーの日本ハムの風土だ。現場の意見を尊重しつつ、最適な仕組みを作ろうと発展を遂げている。今その最前線で業務改革に取り組んでいるのが伊藤恵里奈さんだ。掴んだチャンスを自分のものにし、さらには未経験の業務に手を挙げて積極的に道を切り拓いてきた。
業界をリードするIT活用推進で
日本最大級の食肉事業と量販を支える
日本ハム株式会社 IT・DX推進部 リーダー
伊藤 恵里奈 (いとう えりな)
1987
北海道生まれ。
2000
東京都私立山脇学園中学校に入学。高校時代は数学が好きで理系コースに進むも、文系に転じて文系学部を受験した。
2006
東京理科大学経営学部入学。入学後も、数学の授業を積極的に受講。
2010
大手保険会社に入社。
2012
転職し、日本ハム株式会社 食肉事業本部 輸入商品部に事務職採用で入社。その後、同部署にて営業職へ転換。社内公募制度を利用して、2023年に現部署へ異動し、チームリーダーを務める。

国内食肉加工業界のトップランナーである日本ハム。消費者にはソーセージの『シャウエッセン』やチルド惣菜の『中華名菜』が知られているが、これらは事業の一部にしかすぎない。
同社は食肉を生産・加工し、量販店や食料品店、精肉店などに卸しており、事業の約65%を占めている。伊藤恵里奈さんがかつて配属されていた営業部門は、卸専門の関連会社と共に食肉の受注と卸を担っている。これまでは電話やFAXでのやり取りが中心で受発注ミスや確認に時間がかかることがあり、業務の効率化が求められていた。現在伊藤さんはITの力を使ってこうした業務の煩雑さを解決する取り組みを行っている。
2021年から全社のDX化を始めた日本ハム。時を経て今、さらに一歩深い効率化へとフェーズが進み、生成AIの活用と推進を掲げ、伊藤さんがその一端を担っている。
「事務部門や営業部門の現場での学びがあるからこそ、どうしたら業務改善ができるか、現場の目線で考えられる」と話す伊藤さん。2023年に現部署に配属されるまで、生成AIの活用とは縁が遠かった。しかし「現状維持をしたくない。会社のために、業界のためにできることは何かを考え、挑戦し続けることが好きなので猛勉強した」と話す。未経験の業務を担当し始めてまもなく三年。現在はチームリーダーも務めている。その好奇心や挑戦する力、諦めずに粘る集中力の源はどうやら学生時代の経験にあるようだ。若き頃の伊藤さんの人生に触れながら、今の姿まで追っていく。
好きなこと、やりたいことを探す素地になった学生時代

伊藤さんは1987年に北海道で生まれた。幼少期を北海道で過ごし、のちに東京へ引っ越した。その後私立山脇学園中学校へ進学し、中高一貫校で6年間を過ごした。
女子校時代は活発な友人たちに囲まれて楽しく過ごした。体育祭や文化祭など「女子校ならではのエネルギーにあふれた一体感が今でも印象に残っています」と話す。
社会をリードする女性を育成する規律正しい環境だったことから、周囲には自立している女性が多かった。こうした環境も手伝い伊藤さんはやりたいこと、進路について考えを深めていった。
初めて自分の興味を考えるきっかけとなったのは、高校入学時に理系と文系のクラスを選択する場面だ。農業への関心があったこと、数学や生物が好きだったことから理系クラスを選択し、進学。しかし大学受験が迫る高校3年時のこと。伊藤さんは「将来の選択肢を広げたい」と経営学部を志すようになる。進学希望が定まると文系コースへ進路変更して受験勉強に一層励んだ。高校3年生で文系コースに転じて受験勉強に向けた科目を変えるのは容易なことではない。しかし伊藤さんはこの頃から持ち前の粘り強く、物事に集中する力を発揮し始めた。「得意な数学は受験科目に残しつつ、残りの科目を英語と現代文に定めてその二つに集中的に取り組みました。特に夏休みに短期集中で深く勉強したことから、秋以降に成績がぐんと伸び、手応えを感じました」と話す。メリハリをつけ深く集中したことで、東京理科大学の経営学部への入学が決まった。
理系大学の文系学部を選んだ一つ目の理由は「好きで学んできた理系科目が大学でも役に立つ」という思いがあった。また、受験科目で数学を選べたことも大きかったと話す。大学での学びはのちに事務部門や営業部門での計数管理業務に役立っていたそう。「数学の学びは、社会人になっても役に立ちます。文理関係なく学んで損はないと思います」と後輩たちに向けて語ってくれた。
粘り強く物事に取り組む姿勢がさらに培われたのは、大学時代のスポーツクラブでのアルバイトだ。伊藤さんはスポーツクラブでインストラクターとして勤務し、クラブ利用者一人ひとりに合わせた声がけや運動のアドバイスを行っていた。
当時人とコミュニケーションを取ることを億劫に感じていた伊藤さん。社会に飛び出てみると老若男女がいて、境遇も異なる。似た境遇の女子生徒としか話してこなかった高校時代から、世界が広がりどのように接したらいいのか悩んでいた。
そこで諦めずに試行錯誤するのが伊藤さんの持ち味。ジムでは利用者のトレーニングの補助をしながら声がけをし、さりげなくコミュニケーションを積み重ねていくように。やがて一人ひとりに合わせた声がけやアドバイスを積み重ねていくことで億劫に感じていたコミュニケーションを克服した。アルバイトでの経験は、社会に出て仕事をするうえでの素地になっている。
好きな仕事に関わることを諦めきれなくて

伊藤さんは幼い頃から食べることが好きだった。ギリシャの哲学者であるソクラテスの格言に由来した「食べることは生きること」という言葉がある。つまり「食」とは生活に最も密着したことの一つと言えるのではないだろうか。大学の卒業が見えてきた伊藤さんは、将来の自分の仕事に思いを馳せたとき、目に見えて「誰かの生活に関わる仕事がしたい」という思いを抱き、就職活動では食品メーカーと金融業界を志願。新卒で大手保険会社に就職した。
しかし、憧れであった食品メーカーで働く夢が捨てきれなかった伊藤さんはある日、日本ハムの中途採用の求人を見つけて応募。事務系採用にて見事採用となり、2012年に入社した。「父が『シャウエッセン』が好きで家でよく食べていました。ソーセージといえば『シャウエッセン』一択。だから日本ハムに内定したときは、とても喜んでくれましたね。周囲の人たちにも娘が日本ハムで働いているんだよ、と嬉しそうに話してくれています」。
入社後は食肉事業部門で事務担当としてキャリアをスタートした。しかし伊藤さんの“進化”は止まらない。当時事務職から営業職への転換例はない中、伊藤さんはその仕事ぶりが認められ「営業にならないか」と声をかけられると、迷わず転換。「自分の成長を止めたくありませんでした。誰もやったことのないことだからこそやりがいを感じました」と当時を振り返った。
営業時代は牛豚の輸入の内臓商品の販売を担当。「焼肉屋さんの部位でいうと牛タンやハラミですね。量販店、スーパー、飲食店に卸していました」。営業の業務では心の折れる失敗や苦労を何度も重ねてきた。ルート営業を共にするグループ会社の人と商売の方針や値段交渉のことで意見が食い違うことが多々あった。「そこでめげず、お互いにとって納得できる結果を導き出すように会話を重ねました。コミュニケーションを取ることはエネルギーがいりますが、諦めないことで信頼関係が生まれることをそれまでの経験で学んでいたからです。結果『伊藤さんを信頼しているからこの商品買うよ』『伊藤さんのためならやるよ』という声をいただけるようになりました。当時はそれが何よりのやりがいでした」。
再び転機が訪れたのは2023年のこと。これまでの業務体験から「ITを活用して会社を変えて行きたい」という思いがあり、IT戦略部(現IT・DX推進部)の公募制度に挙手し、異動することになった。
まったくの未経験の仕事を社内で三つも渡り歩いてきた伊藤さん。今でも「現状維持は衰退だ」と言う。なぜこれまで粘り強く諦めずに道を切り拓こうとしてきたのか。答えは「目に見えて誰かのためになっていることが嬉しいから」だ。そのためには学び続けることは欠かせない。これこそが社会人として必要とされ続けるための大事なポイントなのだろう。
未開拓だった領域に挑戦する楽しみ

現在は2024年5月に導入が始まった生成AI活用の推進を担当している。グループ会社のもとに足を運び、研修の実施や実際の業務ですぐに使えるプロンプトや利用方法の紹介をする。最近力を入れているのは社員同士が事例を共有するコンテストの企画と実施だ。会社全体で新しい技術を前向きに活用できる環境づくりに日夜励むことは伊藤さんのやりがいになっている。
配属当初伊藤さんは専門業務の知識に触れたことがないことに不安を感じていた。だが「知らないからこそ誰よりも勉強して、使いこなそうと意気込んでいました」。何冊も専門書を熟読し、業務外の時間に生成AIに触れ、使いこなせるように積み重ねていった。生成AIの使い手となった今、ITの専門用語に頼らず、現場・経営層に分かりやすく伝えるようにつとめている。
未来を担う高校生に伝えたいことは、やりたいことには積極的にチャレンジしてほしいということ。「迷ったときは、『やってみる』ことを選び、失敗を恐れないでください」と話す。かつて伊藤さんは営業時代に間違えて10倍の量のケースの肉を発注してしまったことがあった。大惨事だったが、失敗をしたときにどう対応をするかで物語の結末は変わる。「失敗が自分の財産となり、誰かにアドバイスができることもあります」。
そして将来の素地として勉強することを続けてほしいという。「なぜ勉強しなければいけないのだろう」と感じる人もいるかもしれない。だが、将来の選択肢を確実に広げてくれるはず。悩んだり焦ったりするときは友人や先生、家族などが支えになる。立ち止まることがあっても大丈夫。経験を重ねながら、「自分なりの道を見つけていってほしい」とエールを送ってくれた。
Q&A
お肉が好きで業務後にも食べ歩きをしているそうですね。
食肉部門の営業時代、焼肉屋さんに卸すことが多かったので、業務の勉強を兼ねて食べ歩いていました。食肉のガイド本を片手に、都内の店を端から端まで食べ歩いています。周囲からは「焼肉博士」って呼ばれています(笑)。
伊藤さんのおすすめの肉の部位はありますか?
「フワ」と呼ばれる肺の部分、豚の「ナンコツ」、「シビレ」と呼ばれるすい臓の部分がおススメです。どれも食感がしっかりしています。都内のホルモン専門店でお目にかかることができるので、ぜひ食べてほしいです。



