生徒が自分の可能性を信じられる授業をしたい
稲垣満先生
寺師貴憲先生
とにかく正攻法。でもときにテクニカル。そして高尚にして軽快。みんなを「わかった」に導く。歴史的な背景を基に明解な具体例を駆使した緩急自在の講義を聴けば、きっと漢文が身近になる。そして漢文に感動する!「どうせ取るなら満点、合格するなら首席」を合い言葉に、圧倒的な読解力を養成し、キミのポテンシャルをフルに引き出す。
目次
幼い頃は「優しい子」とよく言われる少年でした。実は今も言われます。ただ、思春期の少年によくあることなのですが、権力を笠に着て力ずくで言うことを聞かせようとする人間には反発しました。根は優しく、大人しいのですが、その手のタイプの教師には、絶対に従いませんでした。
そのせいで、中学時代の成績はほぼ「オール2」の劣等生。勉強は嫌いなくせに、暗記は得意な方だったので、一夜漬けしかしなかったですけど、暗記科目の点数は常に上位でしたし、模試の点数もそこそこよかったです。でも、学校の成績は授業態度やなんやかんやで減点されるので、ひどい有様でした。
中学3年で進路を決めるときは、「できれば高校には行きたくない、行くなら工業高校に行って、すぐに働きたい」と本気で主張しました。勉強も嫌いですし、早く自立して親に迷惑かけたくなかったからです。でも、中学時代、唯一親身に接してくれた先生から「高校は出たらどうだ。とにかく大学に行くという選択肢を残せ」と説得され、結果、とある私立高校の進学コースに進むことになりました。教師に反抗ばかりしていた私ですが、その先生が私にとって最初の恩師と呼べる存在になりました。
そんな中学時代に出会ったのが、芥川龍之介の『侏儒の言葉』でした。そのひねくれた視点に衝撃を受け、それ以来、何事も視点を変えていろいろな角度から見るようになりました。思えば、これが最初の、世界の見方が変わる読書体験かもしれません。
そのあと、『論語』や『老子』に出会うのですが、芥川に続く読書体験を与えてくれたのは『老子』でした。『論語』は、立派な人物になれ、そのために努力せよ、と説教臭いのですが、老子がおもしろいのは「上を目指せ」と言わないところです。逆に「下を目指せ」と言うのです。「上善は水の如し」、すぐれた善は水のように、下に下に向かうものだと。これは、成績は上位ほどよい、スポーツは得意なほどよい、男はモテルほどよい、といった世俗的な価値観に居心地の悪さを感じていた僕にフィットしました。今でも、お金や地位や名声に興味はなく、車と服とか装飾品とか美食にも興味がないのは、この老子の影響です。まさに人生を変える一冊になりました。
高校に入ってからは、多少は勉強するようになりました。興味は老子から孫子や韓非子といった他の「諸子百家」に広がり、『三国志演義』『春秋戦国時代」へと、中国古代史に及びました。受験勉強そっちのけで読書ばかりしていました。
結局、大学で中国思想や東洋史を学ぶことに決めました。中学時代の恩師の説得を受けて「大学進学の選択肢」を残したのがここで生きました。
大学では、生来の勉強嫌いが顔を出し、とにかく専門以外の何かを学んでばかりいました。文化人類学、民俗学、国語学、日本美術、西洋哲学史、論理学、生態学など、当時は博覧強記に憧れて、専門以外の講義も大量に履修し、講義を受けに理学部まで行っていました。また諸子百家を学びに来たのに、フロイトやフーコーなど、現代思想の本ばかり読んでいました。
ここで無理をして、広く浅くですけど、 幅広い学問に触れたことが、結果として、いま予備校での授業に役立っていると感じています。
その後、大学院に進み、本来の目的だった中国思想の研究を改めて志しました。『論語』の一説をもじれば「我二十有にして学に志す」です。
ただ、研究者として成功する人たちは、私の想像をはるかに超えて賢く情熱的で、とても太刀打ちできる相手ではありませんでした。博士課程にまでは進んだものの、三年目には研究の道を諦めつつありました。
そんなとき、仙台の予備校で現代文の講師をしていた後輩から、「漢文の講師が足りないから採用試験を受けないか」と誘われました。これが予備校講師になったきっかけで、なってみたら、天職だと感じるほどやりがいを感じる仕事でした。
自分の人生を振り返ると、『侏儒の言葉』や『老子』など、良い本との出会いが分岐点になりました。 これ以降、強烈な読書体験をするたびに世界の見方が変わり、昨日までの自分とは違う自分になるのを感じました。
最後に、そんな「良い本」の見分け方をお伝えします。それは本を読み終わって顔を上げたとき に、世界がこれまでと違って見えるかどうかです。ただ知識を蓄えるのではなく、高校生の皆さんにも、世界の見方が変わるような読書体験をたくさんしてほしい、そう思っています。
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