数学オリンピック 生物学オリンピック 地理オリンピック 地学オリンピック

センター試験解答速報2016

1日目解答

地理歴史

世界史B 世界史A 日本史B 日本史A 地理B 地理A 

公民

現代社会 倫理 政治・経済 倫理、政治・経済

国語

国語 

英語

英語 リスニング 

2日目解答

理科1

物理基礎 化学基礎 生物基礎 地学基礎 

数学1

数学I 数学I・数学A 

数学2

数学II 数学II・数学B 

理科2

物理 化学 生物 地学 
日本史A
全体概観

大問数・設問数が大幅に変更、社会的関心度の高い問題が目立つ 


大問数
減少(-1) | 変化なし | 増加  
設問数
減少(-2) | 変化なし | 増加  
マーク数
減少(-2) | 変化なし | 増加  
難易度
易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化  

大問数5題、設問数32問となり、昨年度の大問数6題、設問数34問から大幅に変更され、日本史Bとの共通問題も、昨年度から大問の配置が変更された。過去問研究に力を入れていた受験生からみれば最初は戸惑ったかもしれないが、難易度は昨年並みである。
出題形式は、年代整序問題やXYとabの組合せ問題が増加し、逆に4文の正誤問題と空欄補充問題が減少した。また、史料や地図を利用した出題数はほぼ例年通りであったが、グラフや表の読み取り問題は減少し、図版を利用した出題が増加した。
出題範囲は明治初期から昭和戦後期、選択肢文から見た場合は1980年代まで広範囲に及び、日本史Aの「近現代重視」の傾向が顕著にあらわれていた。 分野は例年通り、政治・社会経済・外交・文化とバランスよく出題されていたが、今年度は多くの受験生が苦手とする、図版や史料をともなった社会経済史や近代文化史の出題がやや目立った。
それだけに受験生の間で得点差もややひらくことが予想される。多様な素材を用いた出題の傾向は変わらず、様々な視野から歴史を洞察する力が受験生に求められたといえよう。特筆すべきは第1問で「近代日本における洋装」をテーマに近代女性にスポットがあてられたこと、また、第2問で「明治期の地方制度」を主題に地方制度について、第4問で「日本とオリンピックのかかわり」など、近年、特に社会的関心度の高いトピックスが題材とされ出題されていたことである。
いずれにしても普段から日本社会の一員として、さらには世界を構成する一人の人間として、社会に関心をもち続けることの重要性に気づかされる問題だったといえよう。

年度

大問

出題分野

設問数

マーク数

配点

2016

第1問

近代日本における洋装(会話文)

6

6

20

第2問

明治期の地方制度

4

4

12

第3問

近代日本における動物と人間との関係

6

6

19

第4問

日本とオリンピックとのかかわり

8

8

24

第5問

大正期以降の日本における人々の労働

8

8

25

2015

第1問

日本の産業革命に関する調査報告

3

3

8

第2問

幕末維新期の政治・社会

6

6

18

第3問

明治期の立法機関

4

4

12

第4問

近代の人口調査

5

5

15

第5問

林芙美子とその時代

8

8

23

第6問

第一次世界大戦期から高度経済成長期にかけての日本の商社

8

8

24

2014

第1問

メディアの歴史

3

3

8

第2問

近世後期から明治初期の政治・社会

6

6

18

第3問

明治期の租税制度

4

4

12

第4問

明治期の宗教と社会

5

5

15

第5問

手塚治虫とその時代

8

8

23

第6問

1920年代以降の日本の政治・外交

8

8

24

2013

第1問

東京・上野の歴史

3

3

8

第2問

幕末から明治初期の政治・外交

6

6

18

第3問

明治期における特許制度

4

4

12

第4問

明治期の歴史学の展開

5

5

15

第5問

20世紀の日本における軍事と政治・経済・社会とのかかわり

8

8

23

第6問

昭和期の社会・文化

8

8

24

過去の平均点の推移

2015 2014 2013 2012 2011
45.64点 47.70点 41.64点 48.74点 52.01点

設問別分析
【第1問】近代日本における洋装(会話文)
第1問は昨年同様、会話文形式で出題された。「洋装」という特殊なテーマであり、史料と図版も使用され、出題内容も政治史のほか、近代女性、労働問題、対外関係史と多岐にわたった。出題範囲は高度経済成長期まで、選択肢文の場合は1980年代までと広範囲に及んだ。問2は明治期の自由党、立憲改進党、進歩党などの複雑な政党の動きを理解していないと正答にはたどりつけない。問3は「婦人束髪会」に関して、史料を正しく読み取り、視覚資料を冷静に分析する力が求められている。問5は1940年代の戦時中と終戦後の女性にスポットをあてた文と、歴史用語・人物の組合せ問題であったが、いたって標準的な問題といえよう。さらに、問6の高度経済成長期に関する正文判定(組合せ、4文)問題は、1980年代の「日米貿易摩擦」といった語句もみられたが、様々な耐久消費財の普及した時期を特定する必要があった。特殊なテーマであったが、出題内容は標準的なものであったので取りこぼしのないようにしたい。

【第2問】明治期の地方制度
日本史B(第5問)との共通問題。2013年度の「明治期の特許制度」・2014年度の「明治期の租税制度」に対し、2015年度の「明治期の立法機関」や2016年度の「明治期の地方制度」は取り組みやすいテーマといえるだろう。日本史Bの第5問との共通問題では、かつてグラフ・表を用いた設問がみられたが、昨年は史料問題が1問のみだった。今年は史料や視覚資料などを用いた問題が1問も出題されず、全体的に第2問は取り組みやすくなっている。

【第3問】近代日本における動物と人間との関係
第3問は例年、日本史Bとの共通問題が配置されていたが、今年度は日本史A独自の問題が配置された。「近代日本における動物と人間との関係」という、受験生に興味を抱かせようとする意図を垣間見ることができた。話題は「牛馬」のみならず、「犬」「鳩」「猫」にまで及び、人間生活の多方面にわたり動物が関わっていることが強調されている問題文であった。明治初期から大正期までの社会経済史や文化史の出題が多くを占め、とくに問1、問5、問6の文明開化・文学・自然科学を主題とした近代文化史はミスせずしっかり「乗り切りたい」ところ。なかでも問5は「甲」の絵から、夏目漱石の「吾輩は猫である」を判断させる、工夫された問題であった。問3の年代整序(6択)問題は、「大学令」、「国立銀行条例」、「平民新聞」などの用語を考察しつつ、時代をまたがる視野をもってあたることができれば容易に正解にたどりつけるだろう。

【第4問】日本とオリンピックとのかかわり
日本史B(第6問)との共通問題。2014年度では「漫画家手塚治虫」、2015年度では「作家林芙美子」が取りあげられ、人物を取りあげた問題が定番となっていたが、今年は時事的要素の強いオリンピックが取りあげられた。問2は図をよく見て判断材料をみつけたい(甲では「川端康成」、乙では「築地小劇場」)。問6は日中戦争勃発以後の問題で、やや細かい知識を問うているように感じるかもしれないが、dの「アメリカは石油の対日輸出を禁じた」に類似した文章は、2014年度の問5でも出題されている。やや古い問題になるが、bの近衛声明は2002年度の問3でも出題されている。問7は農地改革の趣旨が理解できていれば、判断は容易である。ただし、a・bの「空欄に入る語句が選択肢の文章のなかに挿入されるパターン」は、新しい出題形式であった。問8のYのような革新首長に関する選択肢は、2014年度の問8でも出題されており、過去問をきちんと研究していた受験生は有利だった。

【第5問】大正期以降の日本における人々の労働
今年度の日本史Aは大問数が6から5に変更され、この第5問が最終問題であった。第5問は大正期以降における人々の「労働」にスポットがあてられ、労働問題と経済史を深く関連づけた出題が目立った。史料やグラフも掲載されたが、前者が初見史料ではあるものの「国家総動員法」に関するものであったこと、後者が「一次エネルギー供給(石油、石炭、水力)」という定番といえるものであったことから、どっしり腰を据えてあたることができたのではないだろうか。問2では「伊波普猷」という、おもに大正期に活躍した沖縄文化研究家が出題されていた。入試では「難度の高い」史実であるが、いわゆる消去法で十分対応できる問題であった。問4のYは、国家総動員法にもとづく法令であったことを考察できれば「価格等統制令」と判断できるだろう。問7は「占領期」という条件から1945年〜1952年までを想起し、教育委員会の人選方法について「公選制」から「任命制」に変更されたのはいつかを考えればよい。問8はエネルギー革命についての理解と、「プラザ合意」が1980年代であることに気づくことができれば問題ないだろう。