皆さんの受験される2020年1月のセンター試験が、最後の実施となります。充分な対策をして本番に臨みましょう。日本史の学習は、理解を深める通史学習と問題演習が大きな柱です。通史学習で学んだ知識を答案に反映できるかどうかは、問題演習によって確かめてみるしかありません。センター試験・日本史Bでよくみられる文章選択形式の問題に真剣に取り組めば、単純な丸暗記では太刀打ちできず、真に理解できているかどうかが重要であると気づくでしょう。第1問のテーマ史は、通史を全て終えていないと取り組みづらいかもしれませんが、第2問は原始・古代、第3問は中世というように、第2問〜第6問は時代ごとに大問が構成されています。通史学習と問題演習をうまく組み合わせて学習を進めてみてください。センター試験・日本史Bには、受験生の学力を測るための、さまざまな形式の良問が並んでいます。空欄補充・年代整序・文章選択や、過去問にみられるような図版や史料を用いた問題など、一定のパターンを把握しておけば、通史の学習の際にどのようなことを意識したらよいのかがみえてくるはずです。
◆「考えながら」覚える習慣をつけよう!
教科の性質上、日本史に暗記的要素が強いことは間違いありません。とはいえ、前述の通り、単純な暗記だけでは、知識は定着しづらく、入試問題への対応も危うくなります。日本史の学習において、最良のバイブルは教科書です。そのことを認識していても、教科書を精読する習慣を身につけている受験生はそれほど多くはありません。単純な作業のように思えてしまい、教科書を精読することが継続できないとすれば、それは、「考える」ことをしていないからだといってよいでしょう。センター試験では、限られた時間内で正確に解答する力が求められます。そのためにも、「考える」日本史学習を習慣にしていきましょう。文化史(仏像彫刻)を例にとれば、仏像彫刻を把握していく際に、(1)ほかの時代で扱う仏像彫刻と比較する、(2)写真で確認してその特徴を考える、(3)当時の仏教はどのような性格をもっていたのかを把握する、(4)政治・外交・社会など他の分野との関連性を確かめる、など複数の視点で歴史を捉えることを意識して、読み方を変えてみましょう。そうして考えてみたことを自分でノートにまとめれば、立派なサブノートができあがっていきます。
◆模試を有効に活用しよう!
学習の習慣をつけるのは、容易ではありません。そこで勧めたいのが模試の受験です。東進の「センター試験本番レベル模試」は、「全国統一高校生テスト」も含めると年間全6回、「難関大本番レベル記述模試」と「有名大本番レベル記述模試」はそれぞれ全5回、実施されます。また、直近の東進模試では、第1回センター試験本番レベル模試(2019年2月24日実施)や、記述式の高2レベル記述模試(2019年3月10日実施)などが新高3生を対象としています。これらは、受験日本史に精通した作題者によって作成されています。学習のペースメーカーとするためにも、これらを受験しましょう。
時事要素の強いテーマが問題文・設問となり、図版・地図・統計資料を利用した設問が姿を消す
大問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
設問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
マーク数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
難易度 | 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 |
大問数6題、小問数36問の問題数は昨年と同様で、2016年度に変更された大問ごとの配点は、今年も踏襲された。昨年は、地図と写真の組合せや視覚資料を4つ用いた新しい形式の設問もみられたが、今年は図版・地図・統計資料を利用した設問が全くみられなかった。一方で、史料の読解を求める設問が目立ち、昨年度よりも丁寧な読解力が求められた。第3問でテーマとされた年号(元号)については、2019年5月から新元号となることを意識した出題と考えられる。
(時代)
旧石器時代〜弥生時代を正面から扱った問題は昨年同様みられなかったが、戦後史からの出題が昨年度より2問増加して4問となり、幅広い範囲(1990年代まで)が対象とされた。
(分野)
例年通り、政治・社会経済・外交・文化とバランス良く出題されているが、政治史の比重が高まり、昨年度若干増加した文化史の比重が低くなったため、受験生には比較的取り組みやすい分野構成であったと考えられる。
(出題形式)
第1問は昨年度同様に会話形式、第6問が日米関係を題材としたテーマ史のパターンで出題された。空欄補充・正誤文組合せ・正誤文選択の問題数は昨年度と変化はなく、歴史用語と説明文との組合せ問題が1題増加し、かわりに年代整序問題は1問減少した(15年度3→16年度4→17年度6→18年度5→2019年度4)。史料問題は昨年度と同様に4題出題されたが、読解は難解で思考力と判断力が問われた。史料問題の出来で差がついたと思われる。初見史料の読解力を高める学習の重要性を示唆する問題だった。
(史料)
史料(円仁『入唐求法巡礼行記』、那須国造碑文、「安房国川名村と金尾谷村での採草地をめぐる争論」、「占領軍進駐ニ伴フ報道取扱要領等」)、が設問の素材として用いられた。
年度 | 大問 | 出題分野 | 設問数 | マーク数 | 配点 |
2019 | 第1問 | 地名とその土地の歴史 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 原始・古代の歴史研究と資料 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世の政治と社会 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の社会・政治・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 近世・近代における公家と華族 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 近現代の日米関係 | 8 | 8 | 24 | |
2018 | 第1問 | 地域とその歴史的文化財 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 原始・古代の国家・社会と音楽との関係 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世から近世初期までの地震とその影響 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の外交・思想・宗教 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 幕末から明治維新にかけての軍制改革と西洋医学 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 石橋湛山 | 8 | 8 | 24 | |
2017 | 第1問 | 東アジア情勢と国内外の交通・通信 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 古代の思想・信仰と政治・社会との関係 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世の政治・社会・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の文化・政治・社会 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 幕末から明治期の大坂(大阪) | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 近現代の公園 | 8 | 8 | 24 | |
2016 | 第1問 | 史料としての日記 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 原始・古代の漆と香の文化 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世から近世初期までの政治・社会・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の政治・社会・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 明治期の地方制度 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 日本とオリンピックとのかかわり | 8 | 8 | 24 | |
2015 | 第1問 | 日本人の海外移住と外国人の渡来 | 6 | 6 | 12 |
第2問 | 原始・古代の農業と社会の変化 | 6 | 6 | 18 | |
第3問 | 中世から近世初期までの政治・社会 | 6 | 6 | 18 | |
第4問 | 近世の政治・経済・社会 | 6 | 6 | 17 | |
第5問 | 明治期の立法機関 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 林芙美子とその時代 | 8 | 8 | 23 |
過去の平均点の推移
2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 |
---|---|---|---|---|
62.19点 | 59.29点 | 65.55点 | 62.01点 | 66.32点 |