皆さんは、共通テストの最初の受験生になります。共通テストでは、歴史に関わる事象を多面的・多角的に考察する過程が重視され、歴史的事象の意味や意義、特色や相互の関連など、総合的に考察する力が求められます。具体的には、(1)教科書で扱われていない初見の資料であっても、そこから得られる情報と授業で学んだ知識を関連づける問題、(2)仮説を立て、資料にもとづいて根拠を示し検証する問題、(3)歴史の展開を考察し、時代や地域をこえて特定のテーマについて考察する問題、など多様な出題が想定されます。従来のセンター試験より、思考力・判断力を求める問題、つまり、資料読解型の問題が数多く出題されると考えてよいでしょう。共通テストに多くの不安を感じるのは当然のことです。しかし、恐れる必要はありません。試行調査の構成は、センター試験日本史Bと同じで、第1問はテーマ史、第2問は原始・古代、第3問は中世というように、第2問〜第6問は時代ごとに大問が構成されています。そのため、通史学習と問題演習をうまく組み合わせて学習を進めることが可能です。学習の進度にあわせて、第2問、第3問というように、試行調査などの演習に取り組んでみましょう。さまざまな形式の問題に取り組めば、通史の学習の際にどのようなことを意識したらよいか見えてくるはずです。日常の学習においては、教科書に掲載されているグラフ・表・絵画などを「ただ眺める」のではなく、「そこからどのような情報を導けるのか」を考察する習慣をつけるとよいでしょう。
◆「考えながら」覚える習慣をつけよう!
教科の性質上、日本史に暗記的要素が強いことは間違いありません。とはいえ、前述の通り単純な暗記だけでは知識は定着しづらく、入試問題への対応も危うくなります。日本史の学習において、最良のバイブルは教科書です。そのことを認識していても、教科書を精読する習慣を身につけている受験生はそれほど多くはありません。単純な作業のように思えてしまい、教科書を精読することが継続できないとすれば、それは「考える」ことをしていないからだといってよいでしょう。共通テストでは、限られた時間内で正確に解答する力が求められます。そのためにも、「考える」日本史学習を習慣にしていきましょう。文化史(仏像彫刻)を例にとれば、仏像彫刻を把握していく際に、(1)ほかの時代で扱う仏像彫刻と比較する、(2)写真で確認してその特徴を考える、(3)当時の仏教はどのような性格をもっていたのかを把握する、(4)政治・外交・社会など他の分野との関連性を確かめる、など複数の視点で歴史を捉えることを意識して、読み方を変えてみましょう。そうして考えてみたことを自分でノートにまとめれば、立派なサブノートができあがっていきます。
◆模試を有効に活用しよう!
学習の習慣をつけるのは、容易ではありません。そこで勧めたいのが模試の受験です。東進の「共通テスト本番レベル模試」は、「全国統一高校生テスト」も含めると年間全6回実施されます。過去問が存在しない共通テストにおいて、試行調査を軸に本番の出題を想定して作成された東進の共通テスト本番レベル模試は、受験当日に高得点を得るための不可欠なツールです。また、「早慶上理・難関国公立大模試」と「全国有名国公私大模試」も、それぞれ全4回、実施されます。また、直近の東進模試では、第1回2月共通テスト本番レベル模試(2020年2月24日実施)や、記述式の3月高2レベル記述模試(2020年3月15日実施)などが新高3生を対象としています。これらは、受験日本史に精通した作題者によって作成されています。学習のペースメーカーとするためにも、これらを受験しましょう。
共通テストの試行調査に類似した、図版を読みとらせる設問が出題された
大問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
設問数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
マーク数 | 減少 | 変化なし | 増加 |
難易度 | 易化 | やや易化 | 昨年並み | やや難化 | 難化 |
大問数6題、小問数36問の問題数は昨年と同様で、2016年度に変更された大問ごとの配点は、今年も踏襲された。昨年は視覚教材を用いた問題がみられなかったが、今年は図版・資料の読み取り問題が3題出題された。なかでも複数種類の資料を読みとる問題は、共通テストの試行調査と類似した性格をもっていた。
(時代)
旧石器時代〜弥生時代を正面から扱った問題は昨年同様みられなかったが、今年は縄文・弥生時代を対象とする問題がみられた。昨年は戦後史については、1990年代までが対象とされたが、今年は占領期までにとどまった。
(分野)
例年通り、政治・社会経済・外交・文化とバランス良く出題されが、昨年に比べ、文化史の割合が増加した。
(出題形式)
第1問は会話形式かその他の形式(2017年は「手紙」の形式)、第6問は人物史かテーマ史(2016年・2017年)だったが、今年は第1問が会話形式、第6問がテーマ史(近現代の風刺漫画)のパターンで出題された。図版を用いた年代整序問題は、今年もみられなかった。年代整序問題は1問増加した(2014年度5→2015年度3→2016年度4→2017年度6→2018年度5→2019年度4→2020年度5)。
史料( 図版 平安京左京の図の一部〔『拾芥抄』より〕、写真「『続日本紀』の写本」、津田左右吉『古事記及び日本書紀の新研究』1919年、 図版 国府〔下野国府〕、城柵〔徳丹城〕、『日本書紀』斉明天皇5〔659〕年7月戊寅〔3日〕条、 紀伊国阿テ(注:漢字は低の旁)河荘の史料〔『高野山文書』〕、『鳥取藩史』第6巻、「田」の字の上であぐらをかいている人物にこん棒が振り下ろされている図〔農地改革指令の漫画、まつやまふみお画、湯本豪一『風刺漫画で日本近代史がわかる本』〕、が設問の素材として用いられた。
年度 | 大問 | 出題分野 | 設問数 | マーク数 | 配点 |
2020 | 第1問 | 教育史と歴史観に関わる教育 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 古代国家の辺境支配 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世の社会 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 中世末から近世における銀と鉄の生産や流通 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 幕末から明治前期の民衆運動 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 近現代の風刺漫画 | 8 | 8 | 24 | |
2019 | 第1問 | 地名とその土地の歴史 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 原始・古代の歴史研究と資料 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世の政治と社会 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の社会・政治・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 近世・近代における公家と華族 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 近現代の日米関係 | 8 | 8 | 24 | |
2018 | 第1問 | 地域とその歴史的文化財 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 原始・古代の国家・社会と音楽との関係 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世から近世初期までの地震とその影響 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の外交・思想・宗教 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 幕末から明治維新にかけての軍制改革と西洋医学 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 石橋湛山 | 8 | 8 | 24 | |
2017 | 第1問 | 東アジア情勢と国内外の交通・通信 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 古代の思想・信仰と政治・社会との関係 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世の政治・社会・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の文化・政治・社会 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 幕末から明治期の大坂(大阪) | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 近現代の公園 | 8 | 8 | 24 | |
2016 | 第1問 | 史料としての日記 | 6 | 6 | 16 |
第2問 | 原始・古代の漆と香の文化 | 6 | 6 | 16 | |
第3問 | 中世から近世初期までの政治・社会・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第4問 | 近世の政治・社会・文化 | 6 | 6 | 16 | |
第5問 | 明治期の地方制度 | 4 | 4 | 12 | |
第6問 | 日本とオリンピックとのかかわり | 8 | 8 | 24 |
過去の平均点の推移
2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
---|---|---|---|---|
67.22点 | 63.54点 | 62.19点 | 59.29点 | 65.55点 |